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猫の寄生虫。感染経路や種類、症状について

病気は、菌やウィルスによって発症するだけでなく、寄生虫によっても発症します。そして、寄生虫にはさまざまな種類が存在し、場合によっては重篤な症状を発する原因になります。感染経路や症状を知ることで、適切な予防を行いましょう。

寄生虫は猫にも人間にも怖い病気をもたらす

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自分以外の動物の体内や体表に侵入・付着して、その動物から栄養を奪うことで生きている動物を寄生虫と言います。寄生虫の中には、猫や犬といった伴侶動物と人間の両方に共通して寄生するものもあります。寄生虫に侵入・付着された動物を宿主と言いますが、宿主は寄生虫に栄養分を取られたり、体内に住みつかれたりすることで、色々な症状を発症して健康を害してしまいます。また、寄生虫の体内にいる病原菌により、宿主が発病することもあります。重篤な場合は死に至る場合もあり、寄生虫を侮ってはいけません。

寄生虫はどうやって猫に寄生するのか?

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寄生虫が宿主に寄生する感染経路は、寄生虫の種類によっても異なります。しかし、体内に侵入する寄生虫(内部寄生虫)の場合は経口感染が、体表に付着する寄生虫(外部寄生虫)の場合は接触感染が主な感染経路になります。寄生虫の感染経路について、いくつか例に挙げてみましょう。

猫回虫(経口感染)

① 回虫の卵を食べたネズミや昆虫、鳥などを猫が食べることで、回虫の卵が猫の体内に侵入します。
② 回虫の卵は胃を避けて酸の影響が弱い小腸で孵化します。
③ 孵化した回虫は腸粘膜に穴を開けてリンパ管に移動し、静脈を通って肝臓に移動します。
④ 肝臓から肝静脈に移り、心臓に入ります。
⑤ 心臓から肺動脈に移り、肺で発育します。
⑥ 肺から気管支に移り、喉に吐き出され、食道から胃に移り、さらに成長します。
⑦ 胃から小腸に移り、そこで成虫になって産卵し、その卵が猫の便と一緒に排出されます。

フィラリア(経皮感染)

① フィラリアの感染幼虫を体内に持っている蚊が猫を刺すことで、フィラリアの幼虫が猫の体内に侵入します。
② 侵入したフィラリアの幼虫は、皮下筋肉内で2〜3ヶ月かけて発育します。
③ 発育したフィラリアの幼虫は心臓の右心室(肺動脈)に移動し、さらに3ヶ月発育してフィラリア成虫になります。
④ フィラリア成虫は、右心室(肺動脈)で多数のミクロフィラリア(子虫)を血液中に産みます。(感染後約7ヶ月目)
⑤ ミクロフィラリアが血液を通して全身に拡散されます。
⑥ 猫を刺した蚊に、ミクロフィラリアが移行します。
 ⑦ 蚊に移行したミクロフィラリアが蚊の体内で幼虫になります。(約2週間)

外部寄生虫(接触感染)

皮膚や被毛など、猫の体表に寄生する外部寄生虫には、ノミ、シラミ、ダニなどがいます。外部寄生虫は、宿主の血液やフケなどを栄養源としており、ノミやシラミのように宿主の体の表面を移動して生活しているものや、ヒゼンダニ(疥癬虫)のように皮膚にトンネルを掘って住みついているものもいます。外部寄生虫は、宿主に寄生していない状態でもしばらくは生きていくことができますので、外部寄生虫に感染している他の動物との接触の他、外部寄生虫が単独で生活している草むらの中に入っただけでも感染してしまいます。外に自由に出ていくことができる猫はもちろんですが、一緒に散歩をしているような猫の場合も、気づかないうちに寄生されていることがあるので注意が必要です。

猫に多い内部寄生虫

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猫に多い内部寄生虫には、下記のようなものがあります。

① 猫回虫

経口感染、経乳感染。低月齢の子猫に強い症状が現れる。削痩、貧血、嘔吐、腹囲膨満、粘液性下痢の症状がみられ、他の疾病との併発を起こしやすく重篤になるケースが多い。回虫の毒素により、運動麻痺や神経症状が出ることもある。

② 猫鉤虫

経口感染、経皮感染、胎盤感染、経乳感染。1歳以下で発病するのが一般的で、重症になるのは6ヶ月未満の子猫が多い。生後1週間頃から粘血便の下痢となり、母乳を飲まなくなって衰弱し、極度の貧血状態になってショック症状の末、死に至る。比較的高月齢の子猫の場合でも、食欲不振、削痩、悪臭のあるタール状の下痢、腹痛、貧血が起こる。排便した便には鉤虫の卵が排出されていることが多いので、他の猫への感染源となる。

③ 猫条虫、瓜実条虫

経口感染。健康な大人の猫の場合は無症状なことが多い。多数寄生した場合や子猫の場合は、食欲不振、下痢、発育不良、削痩、被毛粗剛、貧血、腸炎などの症状が出る。

④ マンソン裂頭条虫

経口感染。マンソン条虫の幼虫を食べたカエル、ヘビ、鳥などを摂食することで感染する。
健康な猫の場合は無症状なことが多い。多数寄生した場合は、削痩の症状が出る。

⑤ フィラリア

経皮感染。蚊に刺されることで感染する。咳、呼吸困難、嘔吐の症状がでる。また、肺動脈で死んだフィラリアに対して急激なアレルギー反応を起こしたり、フィラリアが肺動脈に詰まったりすることで、急性の呼吸困難が起こり、突然死する場合もある。

⑥ コクシジウム

経口感染。体力のある大人の猫の場合は軽い下痢程度の症状だが、多数寄生の場合や免疫力が低下している猫や子猫の場合は重篤になるので注意が必要。黒いタール状の混血下痢が主症状で、他に食欲不振、発熱、貧血、脱水症状など、パルボウィルス腸炎に似た症状が出る。

⑦ トキソプラズマ

経口感染。発熱、削痩、肺炎、腸炎、リンパ節腫脹、肝臓・脾臓の腫脹などの症状が出る。人にも感染する。人が発症することは少ないが、胎盤感染で頭蓋奇形や脳髄膜炎、流産、早産、水頭症などが現れることがあるため、注意を要する。

猫に多い外部寄生虫

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猫に多い外部寄生虫には、下記のようなものがあります。

① ヒゼンダニ(疥癬虫)

接触感染。疥癬症という猫や犬の寄生性皮膚疾患を起こす。激しいかゆみと湿疹のような皮膚炎が起き、境界が不鮮明な脱毛が特徴的。体温が高くなるとヒゼンダニが活発になりかゆみが増す。かゆみで掻きむしると悪化し、皮膚が肥厚して脱毛が進み、悪臭が出る。放置すると全身に及び、栄養状態が悪化して重篤な症状になる。猫の場合、耳の端に発症し、そこから顔面、頭部へと拡がることが多い。

② ニキビダニ(アカルス、毛包中)

接触感染。
初期は、目や口の周辺、前肢に小さな脱毛が出ることが多い。脱毛部位は乾燥していて、健康な猫の場合はほとんどが自然治癒する。稀に全身に拡大する場合があり、この場合は脱毛から皮膚が厚くなり、褐色に変色し、角質化した襞状の皮膚が剥がれ落ちるという経過が見られる。大人になってから発症した場合、難治性の場合が多いようである。

③ ミミヒゼンダニ(耳疥癬虫)

接触感染。
犬や猫に多く発症する。耳に激しいかゆみが生じ、しきりに頭を振ったり、耳をものにこすりつけたり、耳を掻く動作が頻繁に見られたりする。通常は外耳道表皮への寄生に留まるが、重症の場合は炎症が内耳にまで達し、斜頸や旋回運動を起こすことがある。

④ ネコノミ

接触感染。
猫にとって最も一般的な外部寄生虫。背中、腋下、下腹、内股等によく寄生する。皮膚が赤く腫れ、かゆみから脱毛と湿性の炎症を起こすことが多い。重症の場合は広範囲に脱毛し、皮膚が肥厚して襞状になる。発症を繰り返すと、歳をとるほど症状が悪化する傾向がある。ノミが発生する夏から秋にかけて多く発症する。

⑤ マダニ

接触感染。
マダニは呼気に含まれる二酸化炭素により宿主の接近を感知する。マダニが多数寄生すると猫は局所刺激により精神状態が不安定になり、肉球の間に寄生されると跛行となり正常には歩けなくなる。顔や耳に寄生されると頭を振ったり耳を掻いたりする。マダニは動物の皮膚に口器を突き刺して吸血するので、無理やりマダニを引き剥がすと口器が皮膚に残ってしまい、炎症を起こすので無理に引き剥がしてはいけない。

猫のためにも人のためにも予防が一番

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トキソプラズマ、回虫、ヒゼンダニ、マダニは、猫だけではなく人にもうつる寄生虫です。また、猫にはっきりとした症状が出ていなくても、飼い主さんの免疫力が低下していると飼い主さんのみ発症するということもあり得ます。トキソプラズマは前述の通り、妊婦自身には症状が出なくても生まれてくる赤ん坊に大きな影響を及ぼす場合がありますので、注意が必要です。とにかく、猫のためにも人のためにも、病気だけではなく、寄生虫感染についても予防を心掛けることが一番大切です。それには、まず清潔な環境を保つことです。

完全室内飼いの場合でも、飼い主さんが野良猫と接触することで寄生虫を連れてきてしまうこともありますので、外から帰宅したら手洗いをすることが大切です。特に、猫や犬と接触した後は必ず手を洗いましょう。また、愛猫の耳掃除を継続すること(ミミヒゼンダニの予防)、豚肉を生食させないこと(トキソプラズマの予防)、排泄物はできるだけ速やかに取り除くこと等を日々心掛けましょう。またフィラリアに関しては、動物病院で予防薬を処方してもらい、継続的に投与することも有益です。

目黒寄生虫館の紹介

公益財団法人目黒寄生虫館

東京都目黒区に、公益財団法人目黒寄生虫館という施設があります。誰でも無料で入館することができる、寄生虫の研究博物館です。施設そのものは狭いですが、多数の寄生虫の標本や資料が展示されています。見て気持ちの良いものではありませんが、機会があったらぜひ一度見学することをお勧めします。こんな寄生虫が自分の愛猫に寄生してしまったらと、予防の重要性を実感することができると思います。

<基本情報>
東京都目黒区下目黒4‐1‐1
営業時間:午前10時~午後5時
TEL 03-3716-1264(音声案内)
FAX 03-3716-2322
定休日 :毎週月曜日・火曜日/年末年始(開館カレンダー参照)
(月曜日・火曜日が祝日の場合は開館し、直近の平日に休館)
 URL  :https://www.kiseichu.org

 

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