猫とライオン

猫とライオンは、どこが似ていてどこが違うのか?

イエネコとライオン。一見すると、見た目も声も全く異なりますが、同じネコ科の動物であり、意外な共通点もあるのです。共通点や相違点をみていくと、ネコたちの進化の歴史を垣間見ることもでき、興味が湧いてくるはずです。

ネット通販会社のCMで注目を集めた「たてがみの被り物」

某ネット通販会社の、ゴールデンレトリバーがライオンのたてがみの被り物を付けて赤ちゃんと仲良くなるというCMがきっかけなのか、ネット上にはたてがみの被り物を付けている犬や猫の写真が溢れています。たしかに、たてがみを付けた猫は可愛らしいのですが、付けられている猫にしてみれば、迷惑千万な話といったところではないでしょうか。しかし、猫のたてがみは犬のそれよりもはるかに似合っており、同じネコ科同士であることを再認識させてくれます。今回は、そんな猫(イエネコ)とライオンとの共通点や相違点についてみていきたいと思います。

イエネコとライオンの共通点(似ている点)

猫とライオン

猫好きのあなたなら、野生動物写真家の岩合光昭氏をご存知のことでしょう。NHK BSプレミアムで月に1回程度の頻度で放送されている「世界ネコ歩き」の撮影をされているカメラマンです。岩合氏は数多くの写真集を出版されていますが、その中に「ネコライオン」という写真集があります。「視」「触」「味」「嗅」「聴」の5つのカテゴリーに分け、それぞれネコとライオンを対比させた写真集で、ネコライオンの写真展も日本全国で展開されましたので、ご存知の方も多いかもしれません。

この写真集を見ていると、写真集の冒頭に書かれている岩合氏の「ネコは小さなライオンだ。ライオンは大きなネコだ。」という言葉に思わずうなずいてしまいます。仕草や行動が、とてもよく似ているのです。イエネコと大型ネコは、進化の途中で枝分かれしましたので、分類学的には異なる種なのですが、同じネコ科の動物なので、当然似ているところも多いのです。ということで、まずは共通点(似ている点)からみていきましょう。

普段は隠れている爪

ネコ科の動物は、前足に5本、後ろ足に4本の爪を持っています。しかし、イエネコの爪は、普段は見ることができません。指の付け根にある小さな肉球を軽く押すと、その指の爪だけがニュウっと出てきます。普段は爪が隠れているため、地面に接するのは柔らかい肉球だけとなり、イエネコは音もなく獲物に近づくことができるのです。そして、隠していた鋭い爪を出すことで、身軽に木に登ったり獲物を捕まえたりできるのです。これは、イエネコもライオンも同じです。しかし、ネコ科の動物全てに共通しているわけではありません。チーターだけは、常に爪が出っ放しの状態で、爪の鋭さが失われました。その代わり、チーターは速く走ることができるようになったのです。

木登り

前述の通り、イエネコもライオンも、共に鋭い爪を持っていますが、普段は隠して生活しています。しかし、必要に応じて鋭い爪を出すことができます。そのため、イエネコもライオンも、木登りが得意です。しかも、イエネコもライオンも、登るのは得意だけれども降りるのは苦手というところも似ているようです。ライオンは木登りが苦手だと思っている方もいるようです。しかし、ウガンダのイシャシャ地区とタンザニアのマニャラ湖の二つのライオンの群れは、日常的に木の上で休む文化を持っているのだそうです。これは、この二つの群に属するライオンが特殊だからなのではありません。ライオンの生息地のほとんどは草原です。しかし、草原と森が交わる場所には、ライオンにも登ることのできる大きさの木が生えています。つまり、生活環境の中に体重を支えることのできる木があれば、ライオンだって木に登って休む方が気持ちいいという訳です。

集団生活の形態

ネコ科の動物の中、群れで生活するのはライオンだけです。ライオンは、プライドと呼ばれる群れで生活していますが、その社会構造はネコ科動物の中でもユニークなものです。しかし、イエネコも全く群れを作ることがなく、完全に単独で行動しているわけではありません。広く知られているように、夜になるとイエネコたちが集まって集会を開くのもその一つです。集まって何をしているということはなさそうですが、とても友好的な時間を過ごし、真夜中過ぎにそれぞれの棲家に帰って行きます。また、多頭飼いの場合、完全室内飼いでも、イエネコたちは複数頭で友好的に過ごしています。このライオンとイエネコの群れの共通点は、中心が雌であるということです。そして、雄はある程度の年齢になると群れを出て放浪し、強くて健康な雄が広く繁殖の機会を得られるような仕組みになっているという点です。(この場合のイエネコは、主に野良猫になります)

イエネコとライオンの相違点

猫とライオン

それでは、イエネコとライオンの相違点についてみていきましょう。

体格

イエネコとライオンの違いで真っ先に浮かぶのは、体格でしょう。イエネコの体長は、大きくても75cm程度。体重は2.5〜7.5kg程度で、雄と雌であまり大きな違いはありません。それと比べるとライオンの体長は雄で170〜250cm、雌で140〜175cm。体重は雄だと150〜225kg、雌だと120〜182kgと、かなり大型で、また雄と雌での差もかなり大きいです。

大きさ以外の見た目の違い

ライオンの尾には房がありますが、イエネコには房がありません。ライオンの耳は丸いですが、イエネコの耳は尖っています。ライオンの目の大きさは、イエネコと比べると顔に占める比率が小さいです。ライオンとイエネコの顔の見た目の違いについては、前述の写真集「ネコライオン」の表紙を見ると、一目瞭然で面白いですよ。

生息地

イエネコは、人が住んでいるところであれば、おそらく世界中どこにでも生息していますが、ライオンはコンゴ盆地を除くサハラ砂漠以南のアフリカ大陸とインド北西部のギルの森にのみ生息しています。実は、ライオンは北アメリカまで分布を広げていたのですが、1万年前に、北アメリカのライオンは絶滅してしまいました。ライオンが東南アジアや日本に分布できなかった理由は、氷河期にも森林や熱帯雨林が残り、かつそこにトラというライバルが存在したためだと言われています。ライオンの共同で獲物を捕まえるという狩のスタイルは、開けた草原のような環境に適しており、森林のような場所では、トラのような単独での狩のスタイルが向いていたのです。

雄と雌、すぐに見分けがつきますか?

ライオンの場合、雄には立派なたてがみがあり、雌にはたてがみがありません。つまり、外見だけで性別をすぐに見分けることができます。このように、性別によって生殖器以外の個体の形質が異なる現象を「性的二型(せいてきにけい)」といいます。イエネコの場合は、体格も性別であまり差はなく、性的二型が顕著だとは言えません。

狩の方法、協力型か単独型か

生息地の項にも書きましたが、ライオンは共同で狩をするというのが特徴です。しかし、イエネコは他のネコ科の動物同様、単独で狩をします。集団生活の項には、似ている点を書きましたが、この狩の方法の違いは、ネコ科動物の中でもライオンの群れの社会構造が特殊である原因の大きな要素なのではないでしょうか。

イエネコの被毛はカラフルでバリエーションも豊か

イエネコは、人間と共に暮らすことが前提となっており、犬ほどではありませんが、人間によって品種改良が重ねられてきました。そのため、ライオンと異なり、被毛の色や模様のパターンのバリエーションが多いという特徴があります。これは、伴侶動物ならではの特徴といえるでしょう。

ガオーと吠えるか、ゴロゴロと喉を鳴らすか

ネコ科の動物の中で、ライオン、トラ、ヒョウ、ジャガーの4種は、吠えることができます。しかし、この4種は、喉をゴロゴロと鳴らすことはできないのだそうです。逆に、吠えることができないイエネコは、喉をゴロゴロと鳴らすことができます。吠えることのできる4種の大型ネコの声帯には、分厚いパッドがついています。このパッドは、声帯をより長く、重くするため、発声時の声帯の振動を遅くし、声を低音にします。喉をゴロゴロと鳴らす仕組みは、実は解明されていません。しかし、どうやらこのパッドが喉を鳴らす時の振動を弱めてしまうため、ゴロゴロと鳴らすことができない、もしくはできてもイエネコのゴロゴロとは違った、もっと唸っているような音にしてしまうのではといわれています。

イエネコもライオンもネコ科の動物

猫とライオン

主だった項目だけですが、イエネコとライオンの共通点や相違点についてみてきました。言葉の説明だけではなかなか実感できなかったかもしれませんが、写真や映像でイエネコとライオンを比較してみると、さすがネコ科同士と思えることでしょう。そして、逆に相違点について考えてみると、進化の過程が見えてきて面白いと思います。今回は、イエネコとライオンを中心に比較してみましたが、ネコ科の動物には、他にもトラ、ヒョウ、チーター、ジャガー、ウンピョウ、ユキヒョウ、ピューマ、カラカル、オセロット、マヌルネコ等、様々な種類があります。ネコ科動物の分類やそれぞれの生態等を調べてみると、もっと色々な発見があるかもしれません。

参考図書
「ネコライオン」岩合光昭著 クレヴィス
「ネコ科大型肉食獣の教科書」秋山知伸著 雷鳥社
「ネコの行動学」パウル・ライハウゼン著 丸善出版

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