黒猫

猫の歴史〜進化と人との暮らし!人と一緒に暮らすまでの歴史

我々の生活の中にすっかり溶け込んでいる猫ですが、猫はどのように進化して今の姿になり、どのようにして人と一緒に暮らすようになったのでしょうか。今回は、猫の歴史や人との歴史についてみていきたいと思います。

猫の祖先やイエネコへの進化、人との出会いについて知ってみよう

黒猫

最近では、ねこねこ日本史という歴史上の人物に扮した猫が繰り広げる歴史コメディー漫画がNHK Eテレでアニメ化される程、猫は我々人間社会の中に溶け込んでいます。猫の祖先はどのような動物で、いつ頃人と一緒に暮らし始めたのでしょうか。そして、現在のように猫が我々人間社会の中に溶け込むまでの間にどのような歴史が刻まれてきたのでしょうか。今回は、猫の歴史についてみていきたいと思います。

ネコ科動物の祖先 ミアキス

ミアキス

地球が誕生したのは、今から45億5千万年も前のことです。できたての地球は、ドロドロに溶けたマグマの海のような状態でした。マグマの海はやがて冷えていき、蒸発した水が大量の雨となって降り注ぎ、やがて原始海洋が形成されました。そして、35億年前頃に、原始生物が誕生したと考えられています。

それからさらに長い年月を経て、中生代の三畳紀(2億5千万年〜1億4千万年前)になって、ようやく哺乳類の祖先(原始哺乳類)が誕生します。しかし、当時は恐竜を代表とする爬虫類が繁栄していた時代です。原始哺乳類のほとんどはネズミ位の大きさで、恐竜の陰で細々と生きていたようです。

恐竜達が絶滅し、哺乳類は急速に適応放散(一つの祖先から多様な形質の子孫が現れること)していきました。その結果、暁新世(約6500万年前)に、ようやく肉歯類(肉食の哺乳類)が現れます。その仲間が進化して、ミアキスが誕生しました。

ミアキスは、猫、犬、狸、熊などの肉食哺乳類の祖先と言われています。体長は20〜30cm程度。胴長、短足で尾が長く、見た目はイタチやフォッサに似ていたようです。森林に生息して木登りが得意だったと言われており、引っ込めることのできる鉤爪を持っていたようです。

ミアキス以降の進化

剣歯虎類

中新世前期(約2000万年前)に、猫の特徴である、足指で歩き鋭い犬歯を持つ肉食獣(シューダエルルス属)が出現します。このグループからは、猫の直接の祖先であるネコ科動物だけではなく、剣歯虎類(けんしこるい)(サーベルタイガー、スミロドン)も誕生しています。

剣歯虎類は、約100万年までヨーロッパ、アジア、アフリカ、南北米に生息しており、サーベル状の犬歯を持っていて、当時の地球上では最も強い動物だったであろうと言われています。中新世後期(約1200万年前)には、現在のヨーロッパヤマネコの直系の祖先と考えられているフェリス・ルネンシスという小型の猫類がヨーロッパに生息していました。

イエネコのルーツ リビアヤマネコ

猫

約300万年前に、最初の人類と言われているアウストラロピテクスが出現し、約20万年前に、アフリカで、我々ヒトの祖先であるホモ・サピエンスが誕生します。この時期に、現在のネコ科の祖先が三つの種類に分かれました。大型猫(パンサー属)、小型猫(フェリス属)、チーター(アキノ二クス属)です。

現在私たちと一緒に暮らしているのは、イエネコ(フェリスカトゥス)という種です。遺伝の研究により、イエネコの祖先は、ヨーロッパヤマネコの一亜種であるリビアヤマネコであることが分かっています。リビアヤマネコを幼い頃から育てると、人に慣れると言われています。また、野生のリビアヤマネコと、初期のアビシニアンは、容姿や毛色、縞模様がよく似ています。

人ネコにあう

黒猫

2〜1万年前に、ヒトの直接の祖先と言われているクロマニヨン人が出現すると、犬や小型猫が人類に近づいてきました。そして、紀元前約6000年頃になると、アフリカ北東部を流れるナイル川上流域の原住民たちは、リビアヤマネコを飼い慣らし始めました。当初は、鳥や小動物の狩りに役立てていたようです。

地中海キプロス島南部キロキティアの遺跡から出土された猫の骨から、紀元前2000年頃には、リビアヤマネコが家畜化され、イエネコになっていたと考えられています。では、猫と人との歴史を見ていきましょう。

古代エジプト

紀元前約4000年頃には、ナイル川流域で農耕が営まれるようなり、古代エジプト人により、大小の都市が作られました。古代エジプト人達は、猫を紐で繋いだり自由に放したりしながら、家族の一員として可愛がっていたようです。当時の壁画には、貴族の奴隷と遊んでいる子猫の絵が描かれています。

当時、猫は蔵に貯蔵している作物を狙うネズミを退治したり、毒蛇を退治したりするということで、とても大切にされていたようです。紀元前2500年頃にはエジプトに強大な王朝ができ、文明が発達しました。猫の美しさや神秘性が崇拝され、王の墓であるピラミッドには、首輪をした猫の壁画やプロンズ像がたくさん残されています。

やがて猫は神格化されて、女神バステト信仰が広まります。バステトは、女性の胴体に猫の頭部を持つ女神で、バステト像を見たことのある方も多いのではないでしょうか。また、雄猫は太陽の神、雌猫は月の神として奉られ、人々に崇拝されるようになっていきました。また、古代エジプトでは、猫が死ぬとミイラにして手厚く葬り、飼い主は眉毛を剃って喪に服していたそうです。

エジプトから世界へ

古代エジプトでは、猫を聖獣として崇拝していましたので、国外への持ち出しを強く禁止していました。ところが、フェニキアの商人により猫は密輸され、中近東やトルコ近辺の貴族や豪商達の手に渡ってしまいます。

紀元前500年頃には、猫はインドにまで広まりました。そして、仏教の経典をネズミから守るために、中国(300年頃)や日本(500年代)にも持ち込まれていきます。イスラム教の開祖モハメットは、大の猫好きであったと言われています。

猫は、ヨーロッパにも広まっていきました。キリスト教とローマ帝国の遠征により広められたのです。100年頃までには、ロシア南部とヨーロッパ北部にまで広まっていたようです。当時のヨーロッパでは、猫はネズミ退治をする貴重な動物として大切にされていました。

暗黒時代

ヨーロッパ社会の中に溶け込んでいった猫でしたが、やがて暗黒の時代がやってきます。民間信仰の中で魔術と結びつけられ、黒魔術や異端的な儀式に用いられることも多かったようですが、教会による本格的な迫害が始まったのは、15世紀でした。

カトリック教会の権威と利益を守るために、邪教や偶像崇拝を排除するための「魔女狩り」が始まります。猫は、魔女の随伴者で、悪魔のシンボルであるとされてしまいました。そのため、魔女だとみなされた人と一緒に迫害を受けました。それどころか、猫を飼う人や匿った人までもが迫害されました。

猫が受け入れられる時代に

猫の暗黒時代は、ドブネズミにより救われました。東方からヨーロッパに侵入したドブネズミが、土着のクマネズミを瞬く間に駆逐していきましたが、このドブネズミを捕食することで、猫が再び認められるようになったのです。また、19世紀になるとパスツールが病気の原因の多くが細菌であり、不潔さが病気に結びつくと証明しました。動物の中でも綺麗好きであった猫は、これにより人々に受け入れられるようになっていったのです。

日本猫の歴史

白猫

では、日本猫の歴史についてもみてみましょう。

中国からやってきた

約2500年前の弥生時代、日本でも農耕が始まりました。穀物を荒らすネズミを猫が捕食していたようで、当時の遺跡から、多くの猫の骨が出土しています。しかし、これらは野生猫で日本猫の祖先ではないようです。前述の通り、猫は仏教の経典と共に500年代に中国から入ってきました。仏教が伝来したのは538年と言われています。この後、遣隋使、遣唐使によって様々な物が持ち込まれますが、その際にネズミの被害を防ぐため、船に猫が乗せられたのです。日本猫の祖先は、この猫達だと言われています。

江戸時代に市民権を得る

江戸幕府第5代将軍の徳川綱吉は、「生類憐れみの令」を1685年に発令しました。この発令は綱吉の死と共に廃止されてしまいますが、この発令により、生き物が大切にされ、猫の断尾や繋ぎ飼いが禁止されました。鎌倉時代に短尾の猫が輸入され、日本には尾が丸まって短い猫が増えました。しかし、尾の長い猫もおり、猫は歳をとると尾が二股に分かれた猫又という化け猫になるという伝説により、長い尾を切る「断尾」という習慣が生まれました。猫は数多くの浮世絵に描かれています。特に、歌川国芳の「猫飼好五十三疋」が有名ですが、73匹中52匹が尾曲猫(短尾の猫)でした。

現在、日本猫は外来品種との混血が進んでしまい、純粋な日本猫はほとんど残っていないようですが、日本からアメリカに輸出された日本猫を計画的に繁殖させて確立された品種に、ジャパニーズ・ボブテイルがあり、この品種の特徴は丸まった短い尾です。

ついに犬の飼育頭数を抜かす

猫は、その後も我々の生活の中に深く浸透し、多くの人々と、家族として暮らすようになっていきました。既に色々なところで報道されているのでご存知だとは思いますが、2013年から犬の飼育頭数が徐々に減少していき、猫の飼育頭数は横ばいもしくは微増傾向にあった中、2017年、ついに猫の飼育頭数が犬の飼育頭数を上回りました。

不幸な猫を増やさないために

猫

筆者の子供時代は、日本の街角で多くの野良犬を見かけました。しかし、今はほとんど見かけることがありません。その代わり、街角には多くの野良猫の姿が見られるようになりました。その結果、平成29年度の犬猫殺処分数43,227頭の内、猫の処分数は8割を占める34,865頭となっており、不幸な最期を迎えている猫はまだまだ沢山います。(環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」より)長い歴史の中で、我々は猫から恩恵を授かってきたことが分かりました。不幸な猫を増やさないようにすることが、我々が猫に恩返しできることの一つなのではないでしょうか。

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