猫診察

プレドニゾロンに代表されるステロイド剤を猫に使った場合の効能と副作用

ステロイド剤に悪い印象を持っている飼い主さんが多いと思います。ステロイド剤は人に対しても使われていますが、効能範囲が広い代わりに、副作用の怖さもイメージとして広まっているからです。猫に対するステロイド剤について、代表的なプレドニゾロンを例に、少し詳しくみていきましょう。

ステロイド剤って万能?

猫診察

ステロイド剤とは、副腎皮質ホルモンから作られている薬です。猫にだけ処方される薬ではなく、我々人間にもよく使用されている薬です。そして、ステロイド剤には、様々な疾患に効く万能薬のようなイメージが持たれています。

副腎とは、腎臓の少し上の辺りにある小さな臓器で、そこからは複数のホルモンが分泌されています。コルチゾール、コルチコステロンといった糖質コルチコイドと呼ばれているホルモンや、アルドステロンといった尿細管でのナトリウム再吸収とカリウム排出を促進するホルモンなどです。

糖質コルチコイドは、体内で血液中のブドウ糖(グルコース)を増加させてエネルギー源を作らせたり(糖新生)、他のホルモンの効果を増強させたりする働きをしています。その影響範囲は広く、ステロイド剤は色々な病気に対して処方されます。

ステロイド剤として代表的なプレドニゾロンについて、「獣医からもらった薬がわかる本」(世界文化社)から「処方目的」に記載されている内容を引用します。
「イヌ・ネコ・ヒト:炎症を抑えるのに使用する副腎皮質ステロイド剤の使用範囲は広く、虫さされからがんまであります。また、アジソン病、関節リウマチ、膠原病、ぜんそく、ネフローゼ、薬疹、血液障害にも利用されます。」

根幹となる処方目的が「炎症を抑える」なので、結膜炎、腸炎、関節炎など、○○炎といった疾患に多く処方されます。炎症を抑えるという事は免疫機能を抑えるという事なので、他にも免疫異常に関連した疾患(リウマチなど)やアレルギー症、臓器移植後の拒絶反応を抑えるため等にも処方されています。そのため、ステロイド剤を投与中の猫にはワクチンは接種しないという方針の獣医師もいるようです。こうして見てみると、万能とまでは言い過ぎだと思いますが、確かにステロイド剤の効能は多岐にわたっていると言えるでしょう。

ステロイド剤って怖い?

猫と獣医

ステロイド剤のイメージとして、万能薬と共に、副作用が怖い薬というイメージも広く定着しています。確かに、人に対しても猫に対しても、担当医は薬を処方するときに、「ステロイド剤である」ことをきちんと説明してくれるはずです。ステロイド剤は、効果が大きいのですが、大量に長期間使用した場合、副作用が多いのも事実なのです。ステロイド剤を処方するパターンとして、1つは副腎皮質機能が低下したことを補う目的で処方しますが、もう1つはステロイド剤の作用を期待して、必要量より多くの副腎皮質ホルモンを投与するというものがあります。そして、実際には後者のパターンが多いようです。後者の場合、必要量以上の副腎皮質ホルモンが体内に存在する状態になるので、服用が長期にわたったり、量が多くなったりすれば、副作用が起きるのも当然のことと言えるでしょう。

ステロイド剤の副作用

猫

では、実際にどのような副作用が起きるのでしょうか。主な副作用について、みていきましょう。

医原性クッシング症候群(副腎機能の低下)

クッシング症候群とは、副腎皮質機能亢進症のことで、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌される病気です。ステロイド剤は、薬で人為的に副腎皮質ホルモンを追加投与している訳ですから、クッシング症候群と同じ症状が、副作用として出てくる訳です。具体的には、猫の肥満、脱毛、皮膚が薄くなる、お腹が垂れ下がる、筋肉が萎縮するなどの外観の変化と、多飲多尿、食欲増進といった症状が出てきます。

アジソン病

必要以上の副腎皮質ホルモンが体内に長期にわたって存在するということは、視床下部から常に副腎に対して副腎皮質ホルモンの分泌を抑制しろという指示が出され続けるということです。そうすると、副腎は萎縮してしまい、本来の機能を果たせなくなります。その状態でステロイド剤の投与をやめてしまうと、当然副腎皮質ホルモンが作られなくなり、アジソン病になってしまいます。アジソン病になった場合、その治療のために、再びステロイド剤の投与が必要になります。

糖尿病の誘発

副腎皮質ホルモンは糖新生を促進し、糖の取り込みを抑制する(抗インスリン作用)ので、血糖値が上昇し、副作用として糖尿病と同じような症状が出てきます。

消化器症状

下痢、嘔吐が起こりやすくなります。また、胃や十二指腸の潰瘍を引き起こすこともあります。

感染症に罹りやすくなる

ステロイド剤は免疫機能を抑制するので、当然のことですが感染症に罹りやすくなります。同じ理由で、怪我などの外傷も治りづらくなります。

プレドニゾロンについて

猫の投薬

内服薬の場合は、投与量により薬の強さを増減させますが、外用薬(塗り薬)の場合は、薬の種類によって強さが異なります。外用薬タイプのステロイド剤に関する強さの分類について調べてみました。

① 弱い(Weak)
② 中間(Medium)
③ 強い(Strong)
④ とても強い(Very Strong)
 ⑤ もっとも強い(Strongest)

プレドニゾロンの外用薬は、プレドニゾロン軟膏、プレドニゾロンクリーム等ですが、これらは上記の分類では①の弱い(Weak)に属する薬です。猫の場合は舐めてしまうので外用薬で処方されるケースは少ないかもしれませんが、参考にしてください。

獣医師との信頼関係が大切

猫と獣医

手前味噌な事例となってしまいますが、我が家の愛猫は慢性腎不全という持病に加え、昨年(2017年)の5月に脳腫瘍も併発してしまいました。脳腫瘍の薬として様々な薬を投与していますが、昨年の7月にガクッと体調が悪くなり、プレドニゾロンも追加投与する事になりました。しかし、プレドニゾロンは副作用として副腎機能低下や副腎の萎縮を招いてしまうため、慢性腎不全には当然良くありません。治療方針や薬の処方については、慢性腎不全を診てくださっている主治医と脳腫瘍を診てくださっている神経専門医の主治医との間でその都度話し合いながら判断して頂いています。そのため、通院日は必ず主治医が二人揃っている日にするなどの調整が必要となりますが、長期にわたってステロイド剤を使用していても、いたずらに心配することなく治療を続けられています。

もちろん副作用の心配がない訳ではありませんし、腎臓を優先するか脳を優先するかという判断なので、常にリスクがつきまとっています。しかし、飼い主である私も家での基礎数値(採餌量、飲水量、排尿量等)や様子の観察結果を記録し、受診時に獣医師に渡していますし、獣医師も検査結果を詳しく説明してくれるので、病院と飼い主との間での情報共有はかなりできている方なのではないかと思っています。その上での治療方針なので、素人ながらも飼い主側も納得でき、病院との信頼関係も構築できているのではないかと思っています。おかげで、その後も何度かガクッと体調が悪くなることがありましたが、その都度主治医に相談して治療を続け、元の状態近くのレベルにまで回復し、愛猫は今でも自力で歩き、飲食し、トイレで排泄してくれています。

ステロイド剤のように多くの、しかも場合によっては命に関わるような副作用を起こす薬を投与する場合、とても心配になるのは飼い主として当然のことだと思います。しかし、リスクの高い治療や薬を一切拒否するというのは極端過ぎる過剰反応なのではないかと思います。主治医との信頼関係をきちんと構築することで、治療をスムーズに進めることは可能だと思います。飼い主側としては、とにかく自分が納得できるまで主治医に質問することです。そして、できる範囲で勉強をしていくのが良いと思います。勉強といっても、難しい専門書を読むのではなく、高校時代の生物の教科書レベルで身体の仕組みを復習するだけでもかなり違うと思います。

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