椅子の上に猫

猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)

人間の場合、風邪で病院に行ったことがないという人は珍しいと思いますが、動物病院には、あまり風邪で来院している猫がいないように感じています。しかし、猫も風邪に罹りますし、罹ると恐ろしい病気である事は間違いありません。今回は、猫風邪の中でも代表的な猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)についてみていきましょう。

動物病院の待合室には「風邪」の患者が少ないのは何故だろう?

待合室

動物病院の猫専用待合室で呼ばれるのを待っていると、よく他の飼い主さんから話しかけられます。そうすると、当然ですがお互いの愛猫の病気の話になります。動物病院に通う生活が長くなりましたが、不思議なことに、風邪だから連れてきたという飼い主さんに会ったことがありません。慢性腎臓病の猫も多いのですが、他にも糖尿病だったりガンだったりと、大病の名前がよく聞かれます。なぜ、動物病院の待合室には風邪の患者が少ないのでしょうか。今回は、猫の風邪と言われている、猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)について考えてみたいと思います。

人間と猫の間で風邪はうつるのか?

人と猫2匹

愛猫の持病を診てもらうために、月に1〜2回は動物病院に行くのですが、ある時私自身がひどい風邪をひいてしました。その時に、主治医に「私の風邪が愛猫にうつるという事はありますか?」と尋ねたところ、「人間と猫の風邪は病原体が違うのでうつりませんよ。安心してください。同じように、猫の風邪が人間にうつることもありませんよ。」と言われて安心したことがあります。幸い、愛猫は風邪に罹ったことがありません。しかし、人間の病院の待合室と比べて、動物病院の待合室にはほとんど風邪で来院している猫がいないのは不思議だと思い、猫の風邪について調べてみることにしました。

猫の風邪の代表格は猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)

猫風邪の病原体は、猫ヘルペスウィルス1型(FHV-1)、猫カリシウィルス、猫レオウィルス、猫クラミジア、ボルデテラ・ブロンヒセプティカ (細菌)など複数あります。ですが、その大半は猫ヘルペスウィルス1型による猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)と猫カリシウィルス感染症(FCV)です。今回は、特に、この猫風邪の大半を占めている猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)について調べてみました。

猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の症状

猫

まずは、どのような症状が出るのでしょうか。FHV-1は鼻から侵入します。成猫では主に鼻腔、咽頭、扁桃、気管上部などの粘膜で増殖し、組織を破壊します。2〜4日の潜伏期間の後、40℃前後の発熱と食欲不振、元気の消失が見られます。そして、くしゃみ、多量のよだれ(流涎(りゅうぜん))が見られ、また鼻汁で鼻がつまるので口を開けて呼吸をするようになります。また、結膜炎も見られます。結膜炎は、進行すると失明の恐れもあります。まだ幼い猫の場合は脱水や栄養不足で死亡する危険性も高く、風邪だからといって馬鹿にはできません。また、罹患猫が妊娠している場合は、死産や流産の原因にもなります。

また、猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の特徴は、回復後もウィルスが中枢神経系内に潜伏し、持続感染することが多いということです。つまりウィルスキャリアーの猫が多いのです。キャリアーの猫は、普段は免疫系の働きで無症状ですが、闘争、妊娠・出産などのストレスで免疫力が低下すると、唾液などにウィルスが排泄されるので、自分が再発するだけではなく、他の猫への感染源にもなってしまいます。

猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の治療

椅子の上に猫

治療法は、対症療法と支持療法を行います。対症療法としては、気道の保持、脱水防止、抗生物質による二次感染防止を、支持療法としては、栄養補給や温度管理を行います。早ければ数日、遅くても2週間以内に回復することが多いようです。また、重症化してしまった場合には、対症療法に加えて、猫インターフェロンという抗ウィルス薬も併用します。猫インターフェロンは、FHV-1の増殖を抑制する効果があるのです。

猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の薬

猫に薬あげる

一般的に、猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の治療薬としては、下記が挙げられます。

① 内服薬抗生剤、抗ウィルス薬
② 点眼薬(目薬) 抗生剤(猫インターフェロン製剤を添加することもあり)、抗ウィルス薬

また、あるペット保険会社が参考として示していた猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の治療費は、18,114円でした。通院2回、2週間の治療期間で、診察代、薬代の他、X線検査の費用も含めた料金として記載されていました。症状の度合いや動物病院によっても費用は異なりますが、参考にはなるでしょう。

多頭飼いの場合は特に注意が必要

多頭飼いの場合、愛猫が猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)に罹ってしまうと、特に注意が必要です。発症した愛猫が他の愛猫の感染源になってしまうからです。猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)は、感染猫からの接触感染や飛沫感染により広がってしまいます。猫同士のグルーミングやくしゃみ、涙や目やにとの接触などがないように、感染猫を隔離しましょう。

また、飼い主さんが感染猫のケアをした時に、身体や衣服によだれや目やに、涙などが着いてしまい、そのまま他の猫のケアをした時に感染させてしまうということもあります。感染猫のケアをした後は、消毒とまでは言わなくても、必ず手を洗い、服を着替える等の配慮が必要です。

猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の予防

猫

猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)の特徴は、回復した猫がウィルスキャリアーとなってしまい、再発したり他の猫への感染源になってしまったりするという事は、前述の通りです。そのため、一番大切な事は「予防」です。猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)は、ワクチンで予防することができます。予防のため、完全室内飼いの場合であっても、必ずワクチンによる予防を定期的に行うべきだと思います。猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)と猫カリシウィルス感染症(FCV)、猫汎白血球減少症(FPV)は、感染力が強くて猫との直接的な接触がなくても感染してしまい、かつ重症化しやすく致死率も高いので、この3つの感染症に対するワクチンはコアワクチンと呼ばれています。

そして、このコアワクチンが全て賄える「3種混合ワクチン」がありますので、最低でもこの3種混合ワクチンは、定期的に実施するべきでしょう。最初のワクチンは、生後8〜9週齢で初回接種を、その後3〜4週後に2回目の接種を行うのが一般的です。14〜16週齢またはそれ以降に最終接種を行い、完了後12ヶ月以内に4回目の追加接種を受ければ、初年度のワクチン接種で免疫反応が十分起きなかった猫も、十分な免疫を得ることができると言われています。

その後は、コアワクチンの場合は3年に1度の接種が一般的になりつつありますが、毎年の接種を推奨している病院もありますので、詳細はかかりつけの動物病院で相談してみましょう。いずれにしても、猫風邪の大半を占める猫ウィルス性鼻気管炎(猫ヘルペス)と猫カリシウィルス感染症(FCV)はコアワクチンに分類され、3種混合ワクチンが定着してきているため、動物病院に猫風邪で来院している猫が少ないのではないでしょうか。

関連記事一覧