
猫の品種について知っておきたい5つの事
猫の品種について知っておくことで、自分の生活の中で無理なく一緒に暮らせる猫を選ぶことができます。知識としてだけではなく、実際の愛猫との暮らしに活かせる知識を身につけましょう。そして、愛猫と一緒に最後まで幸せな暮らしができるように準備しましょう。
猫の品種(純血種)について
一般社団法人ペットフード協会の2017年度全国犬猫飼育実態調査によると、2017年に日本で生活している猫の17%が純血種だということです。2015年の純血種飼育率は15%でしたので、少しずつですが純血種の飼育率は増加傾向にあるようです。品種ごとに品種固有のキャラクターがあり、その下に猫の個々のキャラクターがあります。これから一緒に暮らす猫を探そうとしている方の参考となるよう、今回は猫の品種の特徴や品種好発性疾患などについて考えてみたいと思います。
猫の品種はどのくらいあるの?
猫の品種は何種類あるのかご存知でしょうか。実は、いくつと正確に答えることはできません。世界には猫種登録団体が複数あり、それぞれの団体ごとに認可している品種が異なるためです。世界的に活動している5つの代表的な団体が2017年に登録している品種の数は下記の通りです。
① CFA(The Cat Fanciers’ Association):42種 |
CFAは猫の品種改良による遺伝的な欠陥を排除した、各種血統の健康促進を最大の目的としており、世界最大の愛猫協会として活動している非営利団体です。 |
② FIFe(The Federation Internationale Feline):46種 |
フランスで始まった欧州最大の猫血統登録団体です。現在は、南米やアジアにも会員が広がっています。 |
③ GCCF(The Governing Council of the Cat Fancy):33種 |
イギリスの猫血統登録団体です。 |
④ TICA(The International Cat Association):76種 |
純血種および家庭猫(ハウスホールドペットキャット)の世界最大の血統登録機関です。キャット・ショー公認機関としても世界最大の団体の一つです。 |
⑤ WCF(World Cat Federation):79種 |
ドイツに登録されている猫クラブの国際協会で、世界中の280の組織と提携しています。 |
品種により罹りやすい病気がある
犬では有名な話ですが、猫にも、品種により罹りやすい病気、品種好発性疾患があります。品種は人が作為的に作り出した血統ですので、人為的に交配を重ねていくうちに遺伝子プールが狭くなってしまう(遺伝的な多様性がなくなってしまう)ためにおこる現象です。品種好発性疾患についての研究は、犬では進んでいるようですが、猫についてはまだ遅れているようです。そのため、飼い主側も、どの品種にはどのような好発性疾患があるのかを知った上で、その品種を選ぶべきだと考えます。では、代表的な好発性疾患にはどのようなものがあるのかをみていきましょう。
肥大型心筋症
肥大型心筋症(HCM)は、心筋が厚くなるため、心臓の内部が狭くなる病気です。心臓が血液を力強く送り出せないため、血液が体内をうまく循環できなくなります。好発品種はメインクーン、ラグドールです。HCMを起こす可能性のある遺伝子変異の有無を検査することができるので、この2品種と一緒に暮らす場合は、検査で確認した方が良いでしょう。この遺伝子変異を持っている猫には、特に心臓の検診を高頻度で行うとか、繁殖相手にこの遺伝子変異を持っている猫を選ばない等の注意が必要です。
多発性嚢胞腎
多発性嚢胞腎(PKD)は、一度起きてしまうと元には戻らない(つまり完治しない)、ゆっくりと進行する遺伝性の腎臓病です。人では、難病指定されている病気です。最終的には腎不全という命にも関わる病気になってしまいます。
好発品種はペルシャです。また、スコティッシュフォールドは折れ耳同士の交配が行えないため、ペルシャと交配していたという経緯があるので、スコティッシュフォールドにもPKDの発症リスクが高いと言われています。この遺伝子も検査できるので、確認した方が良いでしょう。また、治療と並行して、飼い主さんは腎臓に負担を掛けない食事(塩分過多にしない等)を心がける必要があるでしょう。
ピルビン酸キナーゼ欠損症
ピルビン酸キナーゼ欠損症(PKDef)は、ピルビン酸キナーゼ(PK)という酵素が赤血球に存在しない病気です。PKはエネルギーを作り出すために必要な酵素で、これが赤血球にないことで、赤血球の寿命が短くなり、貧血になってしまいます。好発品種はアビシニアンやソマリです。また、統計的には日本国内のシンガプーラも好発品種だといえる数値を示しています。
この遺伝子検査も可能ですので、確認した方が良いでしょう。検査の結果、キャリア(変異遺伝子を1本しか保有していない)の場合は軽症だと考えられますので、激しい運動をさせない、無理に運動させないといった注意を守るだけで生活の質を保つことができます。
残念ながら、両親から変異遺伝子を1本ずつ受け継いでしまっている場合は、貧血症状が重症です。今の獣医療では猫の骨髄移植はまだまだ非現実的という状況ですので、動物病院で診てもらい、激しい運動をさせない等の他に、対症療法等をしてもらうことが必要になるかもしれません。
これから一緒に暮らす猫を選ぶ場合のアドバイス
これから一緒に暮らす猫を選ぼうとしている方は、猫種ごとに特徴がありますので、それを参考にしてみてください。せっかく一緒に暮らし始めたのに、飼い主さんと愛猫の相性が良くなかった、思っていた以上に手間がかかって面倒をみきれないなど、不幸な結果にならないように、人と同様、猫のパートナー選びも慎重に行いましょう。
長毛種(ペルシャ、メインクーン等)
猫は、元々は短毛の動物でした。しかし、品種改良により長毛の猫種が作られたのです。そのため、長毛種の猫と一緒に暮らす場合は、短毛種の猫よりも手間が掛かります。長毛種の猫には、毎日のブラッシングが欠かせない事は覚悟しておくべきです。また、月2回程度はシャンプーも必要です。見た目だけの問題ではありません。ブラッシングを怠ると、セルフグルーミングの際に飲み込んでしまった毛がお腹の中に溜まってしまい、毛球症になってしまうからです。
特にペルシャは毛が細くて絡みやすいので、毛球ができやすい品種です。また、顔が短い品種(ペルシャ、スコティッシュホールドロングヘアー)は、舌も短いので上手にセルフグルーミングを行えず、毛玉ができやすいという特徴もあります。もし、飼い主さんがとても忙しくて毎日のブラッシングや月に2回程度のシャンプーを行うことが難しいのであれば、長毛種の猫を選ぶべきではないでしょう。
無毛種(スフィンクス等)
無毛種も、品種改良により作られた猫種です。代表的な品種がスフィンクスです。無毛種の猫は、温度管理が大切です。無毛とは言っても、実際には産毛のような短い毛に覆われているのですが、それでもやはり、体温の保持ができませんので、冬には低体温症を防止するための対策が必要になります。対策として洋服を着せるという方法が一般的ですが、着せっぱなしにするとセルフグルーミングができずにストレスが溜まるというデメリットもありますので、着せっぱなしは避けてあげましょう。
また、身体を覆っている被毛は皮脂を吸い取ってくれるのですが、それがないので飼い主さんが皮脂を拭き取ってあげなければなりません。このケアは毎日やってあげる必要があります。固く絞った蒸しタオルで皮脂を拭き取るとか、シャンプーをする等の方法があります。皮膚にシワが多いので、シワの中も綺麗に拭いてあげましょう。
また身体を覆う被毛がないため、何かあると直接皮膚が傷つけられてしまい、怪我をしやすいのも特徴です。特に多頭飼いの場合は、喧嘩をすると怪我につながる可能性が高いので、気をつけてあげましょう。スフィンクスはとても人懐こく陽気で活発な猫なので、一緒に暮らすと楽しいのですが、やはりきちんとケアする時間を取れない場合は、選ぶべきではないでしょう。
短頭種(ペルシャ、エキゾチックショートヘアー、ミヌエット等)
短頭種、つまり鼻がつぶれている猫種の場合は、涙を鼻に送る管が塞がりやすく、目が常に涙で汚れてしまい、目頭のあたりに黒い涙焼けができてしまうという特徴があります。写真集のペルシャは真っ白でとても美しいですが、あのような状態を維持するためには、1時間おきに顔を拭いてあげる必要があるのです。やはり、忙しい飼い主さんには難しい品種かもしれません。なお、犬もそうですが、短頭種は一般的な鼻の猫よりも麻酔のリスクが高いので、病院で手術を行う時などは、十分にリスクを理解しておく必要があると思います。
折れ耳の猫(スコティッシュホールド、アメリカンカール等)
耳が折れている原因は、耳介軟骨の形成異常です。しかし、耳介軟骨だけではなく、関節の軟骨にも問題が生じてしまうので、骨軟骨異形成症が発症しやすいというリスクがある事を知っておきましょう。また、折れ耳の猫種は、一般的な猫種に比べると耳道が狭いという傾向があります。そのため耳の中が汚れやすいので、こまめに耳掃除をしてあげる必要があります。
自分の性格や生活にあった猫と一緒に暮らそう
猫の入手方法は色々あります。もし、純血種にこだわりたいという事であれば、優良なブリーダーから購入しましょう。その際は、この記事の内容も参考に、ご自分には合わない品種を選ばないようにして頂けたらと思います。もし、純血種にはこだわらないという方は、保健所や動物病院、動物保護団体等で保護されている猫を譲り受けるとか、友人から譲り受けるという方法も考えてみてください。その際、純血種ではなくても、似ている品種の特徴を参考に、ケアに掛かる手間等を考えてあげてください。
環境省の調べでは、2016年度でも全国で殺処分された猫の数は45,579頭(ちなみに犬は10,424頭)だそうです。しかも、そのうちの約20%は飼い主自身が保健所などに持ち込んだ猫だそうです。せっかく縁あって一緒に暮らすことになった猫に、そんな不幸な最期を迎えさせないよう、暮らし始める前に、ご自身の生活の中で無理なく一緒に暮らせる猫かどうかを基準に選ぶという観点も忘れないでください。