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自宅で猫に皮下点滴をする場合の6つの注意点

猫に多い腎臓病の治療には、皮下点滴がつきものです。毎回病院で受けるのでは、費用も愛猫へのストレスも高まるばかりです。飼い主さんが自宅で皮下点滴をする場合に抱きやすい心配事項や注意事項について、説明します。

猫に多い腎不全の治療

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アイペット損害保険株式会社が発表した保険金請求が多い傷病のランキング(2019)で、猫は1位が下痢、2位が皮膚炎、3位が腎臓病でした。年齢別にみると、0歳では5位以内に腎臓病はランクインしていませんが、1〜6歳では4位、7歳以上では1位に腎臓病がランクインしています。猫は、体の構造やその習性から、腎臓病に罹りやすい動物だと言えるのです。腎臓病は、血液検査の血漿クレアチニン濃度から、4つのステージに分類されます。腎臓に異常がみられるステージ1、軽度の臨床症状がみられるステージ2、様々な臨床症状が全身にみられるステージ3、集中治療が必要なステージ4です。腎臓病の場合、尿を濃縮する機能が低下し、脱水症状を起こします。そのため、ステージ2以上では脱水の管理として乳酸リンゲル液などによる輸液治療(点滴)が重要になってきます。場合によっては、ステージ1でも点滴を行う場合があります。人の場合の点滴は、直接静脈内に投与することが多いですが、猫の場合は、皮下投与という方法もあり、皮下点滴とか皮下補液と呼ばれています。

皮下点滴は、必ずしも病院で行わなくてもよく、獣医師の指導を受け、飼い主さん自身が自宅で行うことができます。自宅で行うと医療費が安価になり、愛猫が通院で受けるストレスも減らすことができます。しかし、獣医師から「自宅で皮下点滴を」と言われると、二の足を踏んでしまう飼い主さんも多いようです。また、いざ自宅で始めたものの、苦労して精神的に滅入ってしまっている飼い主さんもいらっしゃるでしょう。筆者は、以前腺がんで亡くした雄猫に、毎日2回ずつ皮下点滴を行いました。現在も、慢性腎不全の雌猫に、毎日1回ずつ自宅で皮下点滴を行なっています。今回は、自宅で愛猫に皮下点滴をしなければならなくなった場合の注意点や工夫の仕方などをご紹介しようと思います。

皮下点滴の方法

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皮下点滴を行う方法は、各病院で異なります。細かい点になると、獣医師によっても異なる部分があるようです。基本的には、獣医師もしくは看護師がきちんと説明してくれますので、それに従いましょう。また、獣医師から直接指導を受けながら練習もさせてもらえます。大切なことは、この時に納得できるまで質問をし、練習をすることです。実際に自宅で行ってみて、疑問に思ったことや難しい部分があれば、再度獣医師に頼んで練習させてもらうこともできます。筆者も、それぞれの猫に対して2〜3回は病院で指導を受けながら練習させてもらいました。闘病中で定期的に診察を受けているでしょうから、その診察の際にお願いすれば、獣医師は快く指導してくれます。ここでは、ごく基本的な皮下点滴のやり方についてまとめておきます。皮下点滴には、重力落下式とシリンジ式の2通りの方法があります。

重力落下式は、人の点滴と同じように、液剤の入っているパックを高いところに吊るしておき、そこから長いチューブでつないだ針の先を猫の首のあたりに刺し、滴下させる方法です。シリンジ式は、輸液パックの中の液剤を必要量だけシリンジに移し、シリンジの先に刺した針を猫の首あたりに刺し、シリンジの内筒を押して液剤を注入する方法です。重量落下式の場合は、コストが低く、点滴する液剤の量が多くても楽であるというメリットがありますが、点滴量が大雑把になりやすいとか、流れが悪くなりやすいというデメリットもあります。シリンジ式の場合は、輸液の量を正確に投与できるとか、重量落下式よりも簡単にできるというメリットがありますが、輸液の量が多くなるとシリンジを交換する手間が増えるとか、重量落下式よりもコストが高くなるというデメリットがあります。

使用する道具は、輸液剤の入っている「輸液パック」、猫に刺すための「翼状針(手で持ちやすくするために翼状のものが付いている細い針)」、輸液パックの針の差込口の部分を消毒するための「アルコール綿(市販品)」が基本です。加えて、重量落下式の場合は輸液パックと翼状針をつなぐために「点滴チューブ」を使用します。さらに、加圧バッグも使用すると、より短時間で皮下点滴を終わらせることができます。シリンジ式の場合は、必要量の液剤を移す「シリンジ(注射器の本体にあたる部分)」と、輸液パックから液剤を移すための太めの「針」を使用します。

自宅で皮下点滴をする場合に心配になる点

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通常は獣医師や看護師が行う行為を代行するわけですから、色々と心配になったり怖かったりしても、仕方がないと思います。皮下点滴を行う飼い主さんが抱きやすい恐怖心を中心に、その対策を簡単に説明します。

1. 針を刺すことへの恐怖心
針を愛猫の皮膚に刺すのは勇気がいる行為です。それに、針が皮膚にブスッと刺さる感触は、あまり気持ちが良いものではありません。しかし、飼い主さんがおっかなびっくりしながら行えば、猫はもっと怖いに違いありません。針を刺す首の辺りは、猫の皮膚が最もよく伸び、痛みを感じにくい場所です。まずは、落ち着きましょう。そして、刺す瞬間はためらわずに一気に刺すべきです。1度体に刺した針は、鋭さが劣化してしまうため、刺し直すと猫が痛い思いをします。最初の1回でスーッと刺してあげることが、愛猫の負荷を軽くします。また、針の先は斜めにカットされていますので、カットされた穴を上に向けて刺す方が、より痛くないようです。
2. 液剤と一緒に空気を入れてしまうことへの恐怖心
シリンジ式の場合、液剤をシリンジに移す時に、どうしても空気が入り込んでしまいます。液剤をシリンジに移した後に、出来るだけ空気を抜くようにしても、どうしても小さな気泡が残ってしまうことがよくあります。筆者は、その空気を愛猫の体内に入れてしまうことにとても恐怖心を感じていました。しかし、直接静脈の中に投与する訳ではなく、皮膚と筋肉の間に液剤を投与するため、空気が入ってしまうことに対しては、あまり神経質になる必要はありません。翼状針には、シリンジにつなげるための短めのチューブがついていますが、そのチューブの長さ分の空気が入ったとしても問題はないと獣医師に言われてから、筆者は恐怖心が薄れました。
3. 手順を間違えることに対する恐怖心
慣れないことをするので、手順を間違えてしまうとちょっとしたパニック状態になりがちです。筆者は、動物病院で教えてもらった手順を箇条書きにしたメモを用意し、点滴作業中、いつでも見られるように近くに置いてあります。また筆者は、「腎臓を助けてくれる点滴をするからね、約4分間、じっとしていてね。針を刺すよ」とか「1本目の2/3まできたよ。もう少しだからね」、「2本目のシリンジに交換するからね。その間もじっとしていてね」など、常に愛猫に話しかけながら点滴を行なっています。そうすることで、猫も落ち着くようですし、何より筆者自身が手順を間違えずに行うことができると感じています。

皮下点滴をする時に注意すべき6つのこと

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最後に、筆者自身が自宅で皮下点滴を行なってきて、これは注意した方が良いと感じたことをご紹介します。なお、筆者の場合はシリンジ式で行なっています。

1. 液剤は人肌程度に温めてから使用する
冷たい液剤を使うと、嫌がる猫が多いので、輸液パックを電子レンジで人肌程度に温めてから使用すると良いです。筆者の場合、250mlのパックは50秒、500mlのパックは80秒程度温めてから使用しています。なお、熱くし過ぎると火傷をさせてしまいますので、事前にパックの外側からよく温度を確認してください。
2. ビタミン剤を加える場合はリンゲル液には混ぜない方が良い
腺がんだった愛猫に皮下点滴をしていた時は、状況により液剤にビタミン剤を混ぜて投与することがありました。ビタミン剤が混ぜてあると、体内に入る時にしみるようでよく嫌がられました。今になって考えると、ビタミン剤は液剤に混ぜてしまわずに、単独で小さなシリンジに移しておき、点滴後にビタミン剤の入ったシリンジに交換して一気に投与してしまえばよかったと思っています。そうすれば、しみる時間が短くなり、愛猫への負荷も減ったと思うのです。
3. 途中で針が抜けてしまった場合は新しい針に取り替える
たまにですが、点滴をしている最中に愛猫が動いてしまい、針が抜けてしまうことがあります。その場合、針は必ず新しいものに取り替えましょう。衛生面の問題もありますし、何より1度使った針は刃こぼれのような状態になるようで、猫が嫌がることが多いです。
4. 猫が動かないようにする工夫
筆者の場合は、2匹とも暴れて嫌がるようなことはありませんでしたが、猫が動いてしまって自宅でうまく点滴できないというケースが多いと聞きます。筆者はいつも一人で行なっていたため、動かないように無理矢理強く押さえつけることができなかったのも、幸いしていたかもしれません。ご家族に手伝って押さえておいてもらう場合も、あまり強引にしないようにしましょう。また、前述の通り、常に穏やかな口調で話しかけるとか、猫の体のどこかに飼い主さんの腕などが触るようにしておくと、猫は落ち着いてじっとしていてくれるようです。それでも動いてしまう場合は、上部に開口部があるキャリーバッグの中に入れた状態で行うのも、効果があります。また、皮下点滴用に猫を保定する保定袋や保定ベッドが市販されていますので、試してみる価値はあるかもしれません。
5. 痩せこけてしまった猫に皮下点滴をする場合
痩せこけてしまった猫の場合、目視ではちゃんと針が体内に刺さっていて皮膚を突き抜けていないように見えるのですが、点滴をすると液剤が外側に出てきてしまうことがよくありました。シリンジ式の場合、針を刺したらすぐに液剤を注入するのではなく、一旦軽く内筒を引いてみてください。針が突き抜けていると、シリンジの中に空気が入ってきますので、その場合は針を刺し直しましょう。きちんと刺さっている場合は、空気が入ってくることはありません。針の状態は、目視ではなかなか確認できません。重量落下式の場合は、針を刺した周辺を指で軽く触って確認するのが良いと思います。
6. 点滴後に針を抜いた後の処置
点滴が終わって針を抜いた後に、たまに血が出てきたり、投与した液剤が溢れて皮膚が濡れたりすることがあります。針を抜いた後は、針で刺した部分をアルコール綿で少し強めに10数秒間押さえながら、まだ体内に吸収されずに溜まっている液剤を少し押し流すようにさすると、止血や液剤の吸収に効果があります。皮下点滴は、脱水症状を緩和させる効果があります。しかし、皮下点滴を実施していても、いつでも猫が新鮮な水を自由に飲めるようにしておくことが大切だということは、忘れないようにしてください。

獣医師や看護師は飼い主さんの味方

猫を抱っこ

文章で読むだけでは、なかなか不安は消えないと思います。かかりつけの獣医師や看護師は、飼い主さんにとって、一番の味方です。少しでも不安に感じたり、迷ったりすることがあれば、遠慮せずにどんどん質問し、練習をさせてもらってください。飼い主さんが自信を持って行うことができれば、それが愛猫にとっても一番負荷の少ない治療行為になるのです。また、病院で愛猫に対して練習を行うことで、愛猫も皮下点滴に慣れてくるという面もあると思います。獣医師や看護師を味方につけ、気負い過ぎず、適度な緊張感で皮下点滴ができるように頑張りましょう。

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