猫が爪とぎをする場所をコントロールする方法

猫の問題行動でよく耳にする爪とぎ。壁やソファ、ベッド、椅子の脚などがボロボロになり、修繕にお金がかかったり人を呼べなかったりと飼い主さんを悩ませています。しかし、猫にとって爪とぎは生きていくために必要な行為です。どのように問題解決をすれば良いのかについて、考えてみましょう。

猫が健康に過ごすためには爪とぎが欠かせない

猫は、狩をして縄張りを守りながら生きている動物です。それは、人と一緒に暮らすようになってからもあまり変わっていません。家畜化されたとは言っても、野生の習性を色濃く残したまま、今の姿になっているのです。その点が、同じように人と一緒に長く暮らしている犬とは大きく異なる点です。犬は、社会構造も食性も、かなり人と似通ったところがありますが、野生の習性を残している猫は、人には理解しがたい点が多く残っているのです。そしてそれが原因で、人にとっては問題だと感じてしまう猫の行動がいくつか存在しています。その一つが、家の壁や家具に対して行う爪とぎです。

なぜ猫は爪をとぐのでしょうか。主な理由は次の2つです。
1. 鋭い爪を保ち狩に備えるため
「爪をとぐ」と言っていますが、実際に爪を研いでいる訳ではありません。古くなった爪の表面の層を剥がし、その下に生えてきた新しくて鋭い爪を出しているのです。そのため、常に鋭い爪で狩を行うことができるのです。猫にとって、生きていくためには、爪をといでいつも鋭い新しい爪を出しておくことが大切なのです。
2. 縄張りを主張するため
猫は、自分の縄張りの中にいるときは、安心して過ごすことができます。猫が自分の縄張りを主張する方法が、マーキングです。縄張りの中の要所要所に自分のにおいをつけて、ここが自分の縄張りだと主張します。また猫は、一緒に暮らしている仲間と自分のにおいを混ぜ合わせてグループのにおいを作り出します。猫の体には、臭腺といって、強いにおいを出す腺があります。臭腺は、頭や顔、肉球、肛門近くなどに存在します。爪とぎは、新しい爪を出すだけではなく、肉球にある臭腺を壁や家具に擦り付けて、自分のにおいでマーキングしている行為でもあるのです。つまり、猫が安心して暮らせる縄張りを維持・確立するためには、爪とぎはなくてはならない大切な行為なのです。

爪とぎの何が問題なのか

猫に、ストレスなく安心して暮らしてもらうためには、いかに爪とぎが重要な行動であるかが分かって頂けたと思います。つまり、猫に爪とぎをやめさせることはできないのです。それでも、一緒に暮らしている人にとっての問題は、解決しなければなりません。では、猫の爪とぎの何が問題なのかを、改めて整理してみましょう。それは、家具、壁、ふすま、畳などが爪により傷つけられ、ボロボロになることです。その結果、飼い主さんお気に入りの家具が台無しになったり、賃貸の部屋を出ていくときに多額の修繕費用が必要になったり、持ち家の場合でも家のメンテナンス費用が余計にかかったり、部屋がボロボロなので人を家に呼べなかったりしてしまいます。つまり、猫が爪を研ぐ場所が問題なのです。中には、愛猫の爪を抜いてしまうとか、ネイルキャップを用いて対策する飼い主さんもいるようですが、猫に適切な場所で爪をとがせることができれば、このような非人道的な対策は不要になるのです。

猫に適切な場所で爪をとがせるためにはどうすれば良いか

では、爪をとがせるための適切な場所とは、どこでしょうか。それは、猫のために作られた爪とぎ用の道具です。ダンボール製、麻縄製、木製、布製など、さまざまな素材、さまざまな形状の爪とぎが市販されています。猫が、今まで爪とぎをしていたソファやベッド、椅子の足や壁にではなく、猫用の爪とぎで爪をといでくれれば万事解決です。では、どうすれば爪とぎの場所を変えさせられるのかについて、みていきましょう。まず、猫が爪をといでしまう不適切な場所では爪がとげない状態を作り出します。そうすることで、猫に「ここで爪をといではいけない」ということを教えるのです。ソファやベッドであれば、全体にツルツルとした素材の大きな布をかぶせましょう。椅子の足であれば、アルミホイルやビニールマットを巻いてみましょう。

壁やふすまの場合も、猫の背が届く範囲までを、ツルツルとした素材のものを張ってしまいます。また、ソファなどでも、いつも特定の場所に乗って爪をとぐという場合は、いつも乗る場所に両面テープを貼ることで居心地を悪くさせるという方法も良いでしょう。とにかく、「ここでは爪がとげない」「ここは居心地が悪い」という状況を作り出すことで、叱ることなくその場所で爪をとがせないように仕向けます。そして、今まで爪をといでいた場所の近くに、爪をといでも良い場所を作ります。爪をとぐのは、縄張りを主張するためのマーキングですから、部屋の中に複数箇所設置することになるでしょう。

また、猫は飼い主さんと自分のにおいを混ぜてグループのにおいを作りたがりますので、ソファやベッド、飼い主さんがお気に入りの椅子など、飼い主さんがよくいる場所の近くで爪とぎをしているはずです。そういう場所の近くに設置した爪とぎには、飼い主さんのにおいがついたものを一緒に置いておくと、より効果的です。猫が立ち上がって爪をといでいた場所の近くには、縦型に設置するタイプの爪とぎを、猫が上に乗っかって爪をといでいた場所の近くには、横置きで猫が上に乗っかるタイプの爪とぎを置きましょう。

愛猫に適した爪とぎをみつけよう

猫のための爪とぎを設置したからといって、それで安心ということにはならないかもしれません。それは、猫によって好みの爪とぎがあるからです。同じ縦型の爪とぎでも、木製のものを好む猫もいれば、麻縄製のものを好む猫もいます。ダンボール製が好きな猫もいます。同じダンボール製でも、柔らかくてカスが出やすいタイプが好きな猫もいれば、硬くてカスが出づらいタイプが好きな猫もいます。飼い主さんとしては、カスが出づらいタイプを選びたいところでしょうが、そこは愛猫の好みで選んであげましょう。新しい爪とぎを設置したら、おもちゃで愛猫を爪とぎに誘導し、使い方を教えてあげましょう。無理に爪をとがせるのではなく、おもちゃで誘導しながら自然に使わせるようにしてください。愛猫の好みのタイプがわかるまでは、初期投資に少し費用がかかるかもしれません。しかし、好みのタイプがわかれば、あとはメンテナンスで時々買い換える程度で済みます。家具を買い替えることを考えれば、安いものでしょう。

しつけとは思わない方が良い

しつけは叱るものだと思い込んでいる飼い主さんもいるようです。しかし、「しつけ=叱ること」という発想は、もはや昔の考え方です。人も犬も猫も、叱りつけてしつける時代は終わりました。叱りつけて従わせても、それは怖い飼い主さんがいる時だけの一時的なことで、根本的な「良い」「悪い」を理解させることはできないのです。特に野生の習性が色濃く残っている猫の場合、嫌な思いをした場所は忘れません。やって欲しくない場所をやりたくない場所に変え、代わりにやっても良い場所を提供することで、問題を解決に導きましょう。また、やってほしい場所で爪をといだら、ご褒美に大好きなおやつをあげるということで、益々その場所で爪をとぐ行動が強化されていきます。まさに、叱るより褒めることで学ばせましょう。

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