猫の尿路結石症とは

尿路結石症と言っても、それは一つの病気ではありません。尿路の各器官に結石ができる病気の総称が尿路結石症なのです。どこの器官にできているのかによって症状や緊急性が異なり、また結石の成分によって治療法も異なります。猫の尿路結石について、きちんと知っておきましょう。

猫が罹りやすい尿路結石症(尿石症)

猫は慢性腎臓病に罹りやすい動物ですが、それと同じくらい罹りやすい病気に、尿路結石症(尿石症)があります。尿路とは、腰の少し上辺りの背中側の左右に一つずつある、尿をつくる「腎臓」、腎臓でつくられた尿を膀胱に運ぶ「尿管」、尿を一時的に貯めておく「膀胱」、膀胱に貯まった尿を排泄させる「尿道」の4つの器官の総称です。これらの器官にできた結石を、それぞれ「腎結石」「尿管結成」「膀胱結石」「尿道結石」と呼び、それらを総称したものが「尿路結石」です。一般的に尿路結石症と言われているので一つの病気だと思われている飼い主さんも多いと思いますが、実は別々の病気であり、それぞれに症状や緊急性が異なるということを知っておきましょう。

腎結石

前述の通り、腎臓は2つ存在します。2つの腎臓に結石ができる場合(両側性)と片方の腎臓にのみ結石ができる場合(片側性)があります。いずれの場合も、症状としては血尿と腎機能低下がみられます。しかし、腎結石の場合は発生しても劇的な症状が少ないのが特徴です。腎結石が腎臓を傷つけて血尿になることがあっても、膀胱炎のように頻尿や排尿痛はみられません。そのため、気づかれづらく、健康診断で発見されたというケースも多いようです。診断は、画像診断で行います。腎結石はX線画像でも目立ちやすく、比較的発見しやすいのですが、腎結石が小さい場合はX線検査よりも超音波検査の方が発見しやすいので、定期健康診断では、X線検査だけではなく、超音波検査も受けることが望ましいです。腎結石の場合の治療法は、腎切開により腎結石を摘出する外科療法が主となります。しかし、この療法は猫に与えるダメージが大きいため、腎結石の大きさや数、腎機能への影響を合わせて、トータルで判断することになります。

尿管結石

猫の尿管はとても細くて直径が1mm程です。ですから、小さな結石であっても尿管に詰まってしまうと尿路が閉塞し、その結果腎臓に尿が溜まってしまいます。人の場合、尿管結石では激痛が伴うのですが、猫の場合は痛みを感じてもそれを隠そうとするため、飼い主さんが痛みに気づくことは少ないようです。また、片側性の場合は症状が出ないこともあるため、やはり健康診断で発見されるケースが多いようです。しかし、両側性の場合で、かつ尿管を完全に閉塞してしまった場合には尿路閉塞となり、体調が急激に悪化します。元気・食欲の消失、虚脱、昏睡、痙攣と症状が進行し、最終的には死に至ります。診断は画像診断で行いますが、非常に小さいので発見するのが難しいです。X線検査の他、超音波検査やCT検査も併用します。治療は内科療法と外科療法に分けられます。内科療法は、尿道を動かす薬や輸液を行なって尿量を増やすことで、結石を排出しようとするものです。

膀胱結石

膀胱結石の場合、結石が膀胱の粘膜を刺激したり傷つけたりすることで、膀胱炎を起こしてしまいます。そのため、膀胱炎と同じように頻尿、血尿、排尿痛、トイレ以外の場所での排尿、腹部を気にしてさかんに舐めるなどの症状がみられます。膀胱炎の場合は、排尿しきった後も残尿感から何度もトイレに入りますので、膀胱の中はほとんど尿が溜まっていない状態であるという特徴があります。膀胱結石の場合の診断も、画像診断です。膀胱はX線検査でも見やすい場所なので発見しやすいのですが、中にはX線では見えない結石もありますので、超音波検査と組み合わせて診断する必要があります。治療としては、結石の成分により食事療法と外科療法の2つに分かれます。ストルバイト結石(リン酸マグネシウムアンモニウム)の場合は食事療法で溶解させ、シュウ酸カルシウムの場合は外科療法で摘出することになります。ただし、結石の成分を判断するためには、結石を摘出して分析する必要があります。つまり、結石がストルバイトの場合でも、手術により結石を摘出して分析してみないと分からないということです。外科療法には色々とリスクも伴いますので、飼い主さんとしてはなかなか納得のいかない話に感じるかもしれません。獣医師とよく話をし、きちんと納得した上で治療法を決めるようにしましょう。

尿道結石

結石の出来やすさという観点では、雄も雌もあまり変わりありません。しかし、雄の場合は尿道が細くて長い上に、S字状に湾曲した形状をしているため、雌よりも尿道結石による閉塞が起こりやすいです。トイレに行くけれども排尿できないというのが一般的な症状になります。他に、頻尿、血尿、排尿痛、トイレ以外の場所での排尿もみられることがあります。前述の膀胱結石ととてもよく似ていますが、尿道結石の場合は閉塞により排尿できないために膀胱がパンパンに膨らんでいるのが特徴で、非常に緊急性が高い状況ですので、注意が必要です。ポイントは排尿の可否となりますので、そこに注目して愛猫の様子をよく観察してください。尿道閉塞の場合、必ずしも尿道結石が原因であるとは限らないため、尿道閉塞の原因を確認するためにX線検査を行います。

ただし、骨盤内の尿道の場合はX線での診断が困難であるため、CT検査が必要になります。尿道結石の場合は緊急性が高いため、まず緊急処置としてカテーテルを尿道口から挿入して生理食塩水を勢いよく流し入れ、尿道の結石を膀胱に押し戻すという尿道フラッシュを行います。そして、猫の体調が安定してから膀胱に戻った結石を外科療法にて摘出するという2段階になることが多いです。ただし、尿道フラッシュで尿道結石が膀胱に戻らなかった場合は、会陰尿道瘻(ろう)形成術という手術で尿道の先を切断し、会陰部に付け替えるという処置を行います。これにより尿道口が太く、尿道が短くなるため、尿道結石を取り出しやすくなり、さらに次にできる尿道結石による再閉塞のリスクを減らすこともできます。

主な尿路結石の成分と治療法

代表的な尿路結石の成分は、「ストルバイト」「シュウ酸カルシウム」「尿酸塩」の3種類で、猫の尿路結石の90%近くを占めると言われています。以前は猫の尿路結石で圧倒的に多かったのはストルバイトでした。しかし最近は、ストルバイトとシュウ酸カルシウムがほぼ同率で41%程度、尿酸塩が5%程度という比率になってきました。ストルバイトは、一度形成されても食事療法で溶解することができます。また、5歳未満という若年齢の猫に多く、高マグネシウムの食餌とアルカリ性の尿でできやすいという特徴があります。シュウ酸カルシウムは、一度形成されると溶解することができないので、外科的に摘出するしかありません。また、7歳以上の中高齢の猫に多く、高ナトリウム、高カルシウム、高シュウ酸の食餌と酸性の尿でできやすいという特徴があります。尿酸塩は、発生率は低いものの、肝機能障害などの基礎疾患のあることが多いため、基礎疾患が何なのかを探る必要があるということを知っておきましょう。

尿路結石症の予防

結石をつくらなくさせることはできませんが、食餌内容を見直すことで予防できます。市販のフードには、目的により色々な種類があります。キャットフードを与えてれば安心だと思ってしまわずに、適切な種類のフードをきちんと選択して与えるようにしましょう。たとえば、一般食(嗜好性を高めるための食事なので、総合栄養食とは異なり、これだけでは栄養素が満たされない)だけを与えていたり、煮干しなどのミネラルが多く含まれているおやつをたくさん食べさせていたりはしませんか。このような場合は、食餌内容を見直す必要があります。結石の種類がストルバイトやシュウ酸カルシウムの場合は、市販の尿路結石症療法食で予防できることも知っておきましょう。また、尿路結石は尿が濃くなることで起こります。猫の飲水量を増やすことで尿量を増やし、尿の濃度を薄くすることでも結石の形成を予防できます。

飼い主さんの観察で猫の症状を獣医師に伝えることが大切

一言で尿路結石症と言っても、どこの器官にできたのか、結石の成分が何なのかによって、症状、緊急性、治療法が異なることが分かりました。愛猫の様子をよく観察し、異常がみられた場合は、速やかに動物病院で診てもらいましょう。そして、今回ご紹介した内容を参考に、獣医師にポイントを押さえて説明できるように準備をしてください。特におしっこが出ていない場合は、躊躇せずすぐに動物病院で診てもらいましょう。

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