猫を健康で長生きさせる秘訣は歯のケアにあり!

猫は虫歯になりません。でも、猫を健康で長生きさせるためには、歯磨きはとても大切なことなのです。猫の歯や歯周病になる仕組みをしっかり理解することで、愛猫への負荷が少なく、安全で効果的な歯磨き方法をみつけましょう。そして、日々の歯磨きを継続し、愛猫に元気で長生きしてもらいましょう。

歯のケアで猫は長生きできる

皆さんは、歯のケアがしっかりとできている猫は長生きする傾向にあるということをご存知でしょうか。以前、ある猫専門動物病院の院長をされている獣医師の講演会に参加する機会がありました。その際にも、「猫は、歯科疾患が重度であればあるほど、より早期に慢性腎臓病にかかるという報告があるので、日々のケアの中でも特に歯のケアはしっかりと行いましょう」というお話をされていました。筆者が子供の頃は、歯を磨いている猫など見たこともありませんでした。しかし、現在は獣医療も発達し、猫のことについても色々とわかってきました。今では、動物病院の壁に猫のデンタルケアを啓蒙するためのポスターがたくさん掲示されていることが、当たり前の風景になっています。とは言え、どのようにすれば愛猫にストレスを与えず、安全に歯のケアができるのか、どういう状態が健康なのか等、わからないことが多いというのが実情ではないでしょうか。今回は、猫の歯について考えてみたいと思います。

猫の歯に関する基礎知識

人と同様に、猫も最初は乳歯が生えてきて、やがて永久歯に生え変わります。乳歯は全部で26本、永久歯は下顎に2本、上顎に2本の歯が増えて、全部で30本になります。我々でいう前歯に相当する場所にあるのが切歯で、上下に6本ずつ生えています。これはとても小さな歯で、主に、捕まえた獲物の毛や羽をむしる時や毛づくろいをする時に使われます。その両脇に1本ずつ、上下合わせて4本の犬歯があります。犬歯は長く、太い根元と鋭く尖った先端をしており、狩において強力な武器として使われます。その奥に続いている歯を、前臼歯といいます。前臼歯は、乳歯の時には下顎に左右2本、上顎に左右3本ずつの合計10本ですが、永久歯なると上顎と下顎のそれぞれの左右に3本ずつの合計12本になります。そして永久歯では、さらにその奥の上顎に左右1本ずつ、小さな後臼歯が生えてきます。名称は臼歯ですが、人の臼歯のような形状はしておらず、上下の臼歯で肉を噛みちぎるのに適した、斧のような形状をしています。

そのため顎の構造も、臼歯で食べ物をすりつぶす草食動物のように、左右に動くようにはなっていません。乳歯は2週齢頃から生え始めて3〜6週齢頃に生えそろいます。まだ乳歯が生えているうちに歯茎の中で永久歯が作られ、永久歯の成長と共に乳歯の根元の部分が徐々に吸収されていって抜け落ちます。そのため、人の子供のように一時的に所々歯が抜けているというような状態になることはなく、また抜けた歯も大抵の場合は猫自身が飲み込んでしまうため、歯の生え変りに気づかない飼い主さんも多いようです。しかし、稀に生え変わりがうまくいかない場合もあります。3ヶ月齢頃から始まり、7ヶ月齢頃までには永久歯が生えそろいますので、その頃に歯の状態をチェックしてみましょう。乳歯がいつまでも残っているとか、歯茎が赤く腫れていたり出血が止まらなかったりするようならば、動物病院で診てもらった方が良いでしょう。

子猫の頃から歯磨きの習慣をつけよう

歯を健康な状態に維持することは、歯だけの問題ではなく、長生きにも通じることだという話をしました。では、健康な歯とは、どういう状態をいうのでしょうか。人の場合は、虫歯菌が産生した酸により歯が溶かされる虫歯という病気がありますが、猫の場合は虫歯になることはありません。人の口の中は弱酸性のため虫歯菌が増殖しやすいのですが、猫の口の中はアルカリ性なので、虫歯菌が増殖しにくいからだといわれています。猫にとって怖いのは、歯周病です。歯に残った食べかすが元になり歯垢がたまります。やがて歯垢にミネラルが沈着し、歯石に変化します。歯垢や歯石の中にはさまざまな細菌が増殖しますので、放置しておくとやがて歯肉炎になり、さらに歯周病へと進行していきます。やがて細菌は体の中へと入っていき、さまざまな病気を引き起こすリスクが高まるのです。

上記の流れを断ち切ることが、歯のケアになります。最も効果的なケアは歯磨きなのですが、ポイントは歯磨きで除去できるのは歯垢だけだということです。歯石になってしまうと、動物病院で全身麻酔をかけた上で除去してもらうしか、基本的には方法がありません。しかし歯垢であれば、飼い主さんが歯磨きをしてあげることで除去することができるのです。歯磨きの仕方についてはいろいろな書籍やサイトに解説が載っていますので、ここではやり方の話ではなく、歯磨きの考え方について説明したいと思います。猫の歯磨きで最も大切なことは、頻度だと筆者は考えています。歯垢が歯石に変化するまでの時間は48〜72時間です。この間に歯磨きを行えば、歯石になる前に歯垢を取り除くことができるのです。したがって筆者は、1日1回は歯磨きを実施するべきだと考えています。

もちろん、何らかの事情によりできない日もあるでしょう。それは仕方がありませんが、そういう場合でも、どんなに日が空いても3日以内には磨けるようにと考えましょう。次に大切なのは、歯垢がたまりやすい部分の歯磨きを重要視することです。それは、上側の前臼歯と後臼歯の表側です。その次にたまりやすいのが、下側の前臼歯です。切歯と犬歯は、あまり歯垢はたまりません。上側の前臼歯と後臼歯の表側は、必ず磨く必要があります。しかし、猫が嫌がったり噛まれそうだったりして磨くのが難しい場合は、下側の前臼歯や歯の裏側は、磨けなくても仕方がないと割り切っても良いと考えます。上側にある臼歯の裏側と下側にある臼歯の表側は、歯が噛み合わさることにより食べかすが落ちやすく、また下側にある臼歯の裏側は、舌がよく触れることにより食べかすが落ちやすいと考えらます。そのため、最も歯垢がたまりやすい上側臼歯の表側だけでも毎日磨けるように、子猫の頃から習慣づけるようにしておきましょう。

歯磨きの方法は、歯ブラシを使用するのが理想的ですが、難しい場合は市販の歯磨きシートやガーゼ、液体歯磨き、歯磨き効果のあるおやつ等、愛猫と飼い主さんに適した方法を採用しましょう。完璧を目指して挫折してしまうのではなく、長く続けられる方法を見つける方が大切だと考えます。ところで、野生の猫は歯磨きをしないのに、なぜ飼い猫には歯磨きが必要なのでしょうか。それは、野生の猫と飼い猫とでは、食べ物に大きな違いがあるからです。野生の猫は、獲物を噛みちぎって食事を行うため食べかすが歯につきにくいのですが、飼い猫の場合はキャットフードを食べるため、食べかすが歯につきやすいのです。特に、ウェットフードは歯に食べかすがつきやすいことを知っておきましょう。

ケアを続けることの大切さ

歯のケアは毎日行うことです。そして、歯垢が歯石になってしまうと家庭でのケアでは取り除くことができなくなってしまいます。つまり、歯のケアは完璧を目指すことよりも、毎日、しかも一生涯続けられることが大切です。そのためには、愛猫へのストレスが少なく、飼い主さん自身も安全に長く続けられる方法を見つけましょう。

関連記事一覧