猫の顔

【猫の予防医療】ワクチンによる感染症予防!

動物病院に行くのは、愛猫が病気に罹った時ばかりとは限りません。人と同様に、猫にとっても予防医療はとても大切です。完全室内飼育だからといって、感染症に罹るリスクがゼロになるわけではありません。予防医療に対する知識を正しく身につけ、愛猫の健康管理に役立てましょう。

予防医療はなぜ大切なのか

猫の顔

最近では、猫の完全室内飼育が普及しはじめているため、感染症や寄生虫の予防をする必要はないと誤解している飼い主さんも少なくないようです。しかし、たとえ猫1頭だけで一切外に出さずに飼育している場合でも、感染症や寄生虫に感染するリスクがゼロだとは言えません。たとえば、感染症や寄生虫に感染するルートとして、次のようなものが考えられます。

(1) 飼い主が病原体や寄生虫を運んでくるケース

たとえ猫が一切外に出なかったと仮定しても、飼い主まで一切外出しないという生活は、普通考えられません。飼い主が外に出て、マダニなどの寄生虫を連れてきてしまうとか、外で暮らしている猫の糞尿や唾液などに触れてしまい、感染源となるウィルスや病原菌を家に持ち込んでしまうケースは、決して少なくありません。また、飼い主による窓や玄関の開け閉めに伴い、室内に蚊が入り込んでしまうことも多いでしょう。蚊は、フィラリアの媒介となりますので、これも大きなリスクです。

(2) 近所の野良猫等からの空気感染

感染源となるウィルスや病原菌を含んだ唾液や排泄物が乾くと、感染源が空気中に拡散し、その空気を吸い込むことで感染してしまいます。たとえ飼い猫が外に出なかったとしても、近所で生活している野良猫が感染していると、空気感染してしまうことも十分に考えられます。なぜならば、外の空気を一切室内に取り込まないということは難しいからです。

(3) 愛猫の脱走

どんなに飼い主が気をつけていても、ちょっと窓や玄関を開けておいたとか、動物病院へ連れて行く途中等、猫が脱走できるチャンスは少なくありません。特に、避妊・去勢手術をしていない猫の場合は、発情期になると相手を求めて脱走してしまうリスクが高くなります。脱出し、感染している猫と喧嘩をしたり、感染している猫と交尾をするときに首筋を噛まれたりする事で、愛猫が感染してしまうこともあるでしょう。これらのリスクを考えると、たとえ完全室内飼育をしていたとしても、愛猫にはしっかりと予防医療による健康管理が必要だということをご理解頂けるのではないでしょうか。

ワクチンによる感染症予防

猫が横になる

ワクチンによる感染症の予防について、基本的なことを知っておきましょう。

ワクチンのメカニズム

動物には免疫機構というものが備わっており、一度体内に入った病原体を記憶し、次に同じ病原体が体内に侵入した場合には、速やかに病原体を排除し、自分の身を守ることができます。この免疫機構を利用した予防技術がワクチンです。ワクチンとは、ウィルスを人為的に培養し、病原性を弱めて作られたものです。このワクチンを、病原体が感染する前に接種することで、愛猫の免疫機構に病原体を記憶させ、万が一本物の病原体が体内に侵入した場合には、この免疫の力で速やかに病原体を排除させることで、軽い症状で治癒するようにしようとしているのです。

猫のワクチンの種類と費用

ワクチンで予防できる感染症は6つあります。
(1) 猫伝染性鼻気管炎
(2) 猫カリシウィルス感染症
(3) 猫汎白血球減少症
(4) 猫白血病ウィルス感染症
(5) 猫クラミジア感染症
(6) 猫免疫不全ウィルス(猫エイズ)感染症

上記の内、(1)~(3)は症状が強く致死率も高いため、これらの感染症に対するワクチンはコアワクチンと呼ばれており、完全室内飼育の猫でも必要なワクチンです。(4)~(6)に対するワクチンはノンコアワクチンと呼ばれ、猫の飼育環境等により接種をするか否かを決めるのが一般的です。ワクチンには、コアワクチンを全て混合した『3種混合ワクチン』や、コアワクチンに猫白血病ウィルス感染症のワクチンを加えた『4種混合ワクチン』、コアワクチンに猫クラミジア感染症と猫白血病ウィルス感染症のワクチンを加えた『5種混合ワクチン』が用意されています。猫免疫不全ウィルス感染症の場合は単独でのワクチン接種となります。

また、猫カリシウィルス感染症には3つのタイプがあり、その全てのタイプを含んでいる『7種混合ワクチン』もあります。獣医師とよく相談し、愛猫に最も適したワクチンを選びましょう。費用は動物病院により異なりますが、『3種混合ワクチン』の場合は3,000~5,000円、『4種混合ワクチン』と『5種混合ワクチン』の場合は、5,000~7,000円、『7種混合ワクチン』の場合は7,500~8,000円程度が多いようです。また、猫免疫不全ウィルス感染症のワクチンを単独で受ける場合は、3,000~5,000円程度の病院が多いようです。

ワクチンの接種時期

ワクチンの接種時期や頻度については、日本の動物病院間で統一された規定はありません。さまざまな議論がされているところです。しかし、WSAVA(World Small Animal Veterinary Association:世界小動物獣医師会)のワクチンガイドラインに準じているケースが一般的なようです。このガイドラインによると、全ての子猫は最低3回のワクチン接種を受けるべきであるとされています。初乳を飲むことのできた子猫は、初乳により得た移行抗体によって生後数週齢までは感染症から守られます。この移行抗体は、徐々に減っていき、一般的には8週齢前後で消滅します。

そのため、8~9週齢で最初のワクチンを接種し、その後3~4週後に2回目の摂取を、14~16週齢またはそれ以降に最後のワクチン接種をすることが推奨されています。そして、初年度のワクチン接種後は、完了後12ヶ月以内に4回目の追加接種を受けるべきだとされています。その後は、コアワクチンの場合は3年に1度、ノンコアワクチンの場合は1年に1度の接種が推奨されています。以前は、コアワクチンも含めて全てのワクチンが1年に1度の接種を推奨されていましたので、現在も病院によっては全ワクチンの接種を1年に1度としている病院もあるようです。

ワクチンの副作用

近年使用されているワクチンは、安全性や効能、品質について優れており、副作用が出ることは稀だと考えても良いでしょう。しかし、ワクチンのメカニズムで述べた通り、健康な体内に病原体を入れるわけですから、接種前後のケアは大切です。接種前には必ず健康な状態であることを確認し、接種後はアナフィラキシーショック反応に備えてしばらく様子を観察することが必要です。ワクチンの接種により、過敏な体質や体調不良の猫の場合は、アレルギー反応を起こすことがあります。軽い場合は顔が腫れるとかじんましんが出る程度です。しかし、ごく稀に体内に入ってきた異物(この場合はワクチン)に対して免疫機構がとても過剰に反応してしまう場合があります。これが、アナフィラキシーショックです。症状としては、血圧の低下、けいれん、貧血、呼吸困難などです。

アナフィラキシーショックは、ワクチンの接種後10~20分後に起こるため、ワクチン接種後この間は接種した場所で様子を観察することが望ましいです。その程度の時間であれば、大抵病院の待合室で会計の順番を待っていることが多いと思いますが、心配な場合はしばらく病院の中や近所で静かに様子を見てあげれば万が一の場合も安心でしょう。また、注射を打った部位に悪性腫瘍である軟部組織肉腫が起こりやすいという報告もありますが、ワクチン接種の頻度を考えると、そんなに神経質になる必要はないでしょう。もちろん、心配な場合は獣医師とよく相談し、接種する部位を変えてもらう等もできますので、少しでも心配なことがある場合は、獣医師によく相談しましょう。

フィラリア症やノミ・マダニの予防

野原の猫

ワクチンによる感染症の予防の他に、フィラリア症やノミ・マダニといった寄生虫の予防も大切です。これらに対しても、予防薬が出ています。皮膚に滴下するタイプのもの、飲ませるタイプのもの等がありますので、獣医師と相談し、ご自身の愛猫にあったタイプの予防薬を選びましょう。また、予防対象の寄生虫やお住いの環境により、予防薬投与の期間が異なります。飼い主の勝手な判断により、途中でやめてしまうことは避けましょう。

予防医療で愛猫に健やかな暮らしを!

いくら完全室内飼育であっても、感染症のリスクをゼロにすることはできません。獣医療にかかる費用は全額負担となるため、できるだけ動物病院には行きたくないと考える飼い主もいるようですが、動物病院としっかりした信頼関係を築き、きちんと予防医療を行うことで、最終的には医療費も抑えられ、かつ愛猫も健やかな状態で長生きすることができます。リスクも含めてワクチン等の予防医療を正しく理解し、うまく利用していきましょう。

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