猫が水を飲む

猫に水を飲んでもらうための給水器を選ぶ時の4つのポイント

砂漠での生活に適応した猫は、少量の水で濃縮された尿を作ることで、腎臓に高い負荷をかけてしまいます。そのような負荷を軽くし、泌尿器系疾患のリスクを下げるためには、猫になるべく多くの水を飲んでもらうことが必要です。そのための給水器選びの4つのポイントについて、解説します。

泌尿器系の病気が多いのは猫の宿命

猫が水を飲む

ご存知の方が多いと思いますが、猫は、慢性腎不全や膀胱結石などの泌尿器系疾患が多い動物です。泌尿器系とは、腎臓、副腎、尿管、膀胱などの、尿を生成して排泄するまでの器官のことです。尿を生成するのは腎臓で、細胞外液中の水、電解質等の濃度を調節します。完全肉食性の猫は、たんぱく質を多く摂取します。そのため、肝臓での窒素代謝が盛んになり、その最終産物である尿素が尿中に多く含まれることになります。尿素の産生は、人の2.5倍以上にもなるのです。

しかし、ペットとなった(家畜化された)今も野生を残している猫は、砂漠に住んでいた祖先であるリビアヤマネコの特徴を残しているため、少ない水分の摂取で体内に一定量の水分を保持できるような泌尿器系の構造をしており、多量な尿素が濃縮された少量の尿を排泄します。そのため、猫には腎臓をはじめとした泌尿器系疾患が多いのだと考えられています。少しでも腎臓の負担を軽くするためには、水分を必要量飲ませることが大切になります。そのため、長く猫と一緒に暮らしている方の中には、日々の健康管理の中に飲水量の計量を含めている方も多いのです。

猫が1日に必要とする飲水量

猫が水を飲む

では、猫が1日に必要とする飲水分量とはどのくらいなのでしょうか。実は、3段階の簡単な計算で、算出することができます。

<1段階目>
猫に必要な1日の水分要求量(DER)を求めます。実は、DER(単位:ml)は猫の1日のエネルギー要求量(単位:kcal)と同じ数値になります。算出式は下記の通りです。

1日の水分要求量(ml)=1.2 × 70 × (体重)^0.75

※^はべき乗を表しており、^0.75は、0.75乗の意味です。表計算ソフトなどで数式を入力する際にも^を使用します。

<2段階目>
1段階目で算出した水分要求量から、体内で栄養素がエネルギー化する際に生成される水分(代謝水)を除き、1日の水分摂取量を求めます。代謝水は、DERの10%ですので、次の算出式になります。

1日の水分摂取量(ml)=DER − DER × 0.1

<3段階目>
1日の水分摂取量から、フードに含まれる水分量を除いて、1日の飲水量を算出します。フードに含まれる水分量は、メーカーやフードにもよりますが、おおよそ下記を目安に算出すれば良いでしょう。

① ドライフード:10%
 ② ウェットフード:75%
1日の飲水量(ml)=1日の水分摂取量 − (ドライフード摂取量 × 0.1 + ウェットフード摂取量 × 0.75)

例えば、体重が3kgの猫で、毎日ドライフードを35gとウェットフードを20g食べている猫の場合、必要な飲水量は下記の通り、154mlになります。

<計算式>
1日の水分要求量=1.2 × 70 × 3^0.75≒191ml
1日の水分摂取量=191 – 191 × 0.1≒172ml
 1日の飲水量=172 – (35 × 0.1 + 20 × 0.75)≒154ml

あまり水を飲んでくれない猫に水を飲んでもらう工夫

猫が水を飲む

さて、あなたの愛猫の飲水量は、十分な量でしたか?もし、少なすぎるのでもっと飲んで欲しいと思ったのであれば、猫に水を飲んでもらうための工夫を検討してみましょう。まず、基本的なことですが、飲ませる水についての注意点です。日本国内に住んでいる場合、最も適しているのは水道水です。日本の水道水は、衛生面でも問題がありませんし、水質が軟水なので、ミネラル分が少なく、尿路結石等のリスクが低いためです。もしも飼い主さんがカルキ臭等の理由でミネラルウォーターを飲んでいるので、愛猫にも同じ水をあげているという場合、ミネラルウォーターが「軟水」であることを確認してください。

「硬水」の場合はミネラル分が多いので、かえって尿路結石等のリスクが高まるため、猫に飲ませるべきではありません。それでもどうしても水道水はあげたくないという場合は、必ず軟水をあげてください。ペット用のミネラルウォーターも大丈夫です。猫にとって相応しいお水が用意できたら、次の工夫は水を入れる容器、給水器です。たかが給水器と思うなかれ。給水器を変えるだけで、猫の飲水量が結構変わるのです。では、次から、給水器を選ぶ際のポイントについて解説していきます。

給水器の選び方

猫が水を飲む

給水器を選ぶ観点は、素材と形状、手入れのしやすさ、タイプです。これらの観点と費用のバランスを考慮して、愛猫によく合う給水器を選んであげましょう。なお、愛猫がいつでも新鮮な水を飲めるように、室内の複数箇所に給水器を置いてあげるのが望ましい状況です。はじめのうちは、異なる給水器を複数置くことで、愛猫の好みをみつけてあげられると良いですね。

容器の素材と形状

まずは、給水器の素材です。素材なんてどうでも良いと考えがちかもしれませんが、衛生面を考える上で、素材は重要なポイントなのです。給水器は飲み水を入れる容器ですから、常に清潔な状態にしておく必要があります。そのためには、毎日水を取り替える際にきちんと洗浄することが必要です。プラスチック素材は軽いし扱いやすいように思いがちですが、洗浄の際にスポンジで傷つきやすく、傷がつくとそれが原因で菌が繁殖しやすい環境になってしまいますので、要注意です。できれば、陶器、セラミック、ステンレス等の傷つきにくい素材が良いでしょう。

猫のヒゲはとても敏感です。水を飲む際にヒゲが給水器の縁などに触ってしまうと、それを嫌がって水を飲みたがらない場合があります。また、猫も高齢になってくるとあまり屈むような姿勢だと飲食しづらくなるようです。給水器の形状は、口の部分が広く、ある程度の深みがあるか、または台座があり容器が少し高い位置についているような形状のものが好まれます。

メンテナンスのしやすさ

前述の通り、給水器は毎日新鮮で清潔な水を飲んでもらうための容器ですから、1日1回以上の水の交換と、その都度の洗浄が原則必要になります。そのため、どんなに便利な機能の給水器でも、容器の洗浄や必要な部品の調達が難しい製品は、あまり好ましくないと考えます。特に、電動式の自動給水器の場合は、洗浄の容易さと消耗品となる付属品(フィルター等)の入手しやすさについて、事前によく調べた上で購入を検討する必要があります。

給水器のタイプ

給水器には、お皿タイプ、ノズルタイプ、非電動式自動給水タイプ、電動式自動給水タイプの4タイプに分けることができます。それぞれに良い点と不便な点がありますので、下記を参考に選んでください。お皿タイプは、昔ながらの深めの容器で、普通に水を入れて床の上に置いておくタイプの給水器です。計量カップで水を計り、毎日同じ量の水を入れておき、お水を入れ替える際に残っている水の量を計量カップで計ることで、その日の飲水量を簡単に計ることもでき、洗浄もしやすく、とても扱いやすい給水器です。ただし、猫の口についている餌が入ったり、室内の埃が入ったりするため、出来るだけこまめな水の交換が必要です。

最近は、天然希土類元素の成分を含んだ鉱物とバイオセラミックを焼成した素材でできた、水道水を猫が好む風味に変えてくれるというヘルスウォーターシリーズという製品が出ており、安全で猫がよく水を飲んでくれるようです。ノズルタイプは、タンクの先にノズルがついていて、猫がノズルの先端のボールを舐めることで水が飲めるタイプの給水器です。その形状から、ケージに設置する形式の製品が多いようですが、中には床に設置するタイプでノズルタイプの製品もあります。タンクに密閉されている水をその都度舐めて飲むので、水に誇りや餌が入ることがなく、清潔な水を飲ませることができます。ただし、猫によっては飲み方をなかなか覚えてくれず、このタイプの給水器の使用を諦めたという飼い主さんもいらっしゃるようです。

非電動式自動給水タイプは、受け皿と水のタンクがセットになっており、猫は受け皿に溜まった水を飲むのですが、水量が減るとタンクから水が補給されるというものです。タンクの部分はペットボトルを使用できる製品も出ており、値段もリーズナブルです。普段はお皿タイプの給水器を使い、2泊3日程度の出張で家を留守にしなければならない場合などにはこのタイプの給水器を使うというのも、一つの考え方でしょう。電動式自動給水タイプは、電気モーターによりタンクと受け皿の間の水を循環させ、常に水が流れているような状態の給水器です。製品にもよりますが、フィルターにより循環させる水から埃や餌、毛などを除去し、常に清潔な水を飲ませることができるものが多いようです。

また、溜まった水よりも直接水道水などの流れている水を飲みたがる猫には好まれて、多くの水を飲んでもらえることが多いようです。ただし、フィルターは消耗品で、こまめに交換する必要があるため、コストが掛かりますし、構造が複雑なので洗浄に手間がかかるという面もあります。コストで言うと、電気代も当然掛かるのですが、1ヶ月分で50〜100円程度のようです。これ位のコストで猫が水を十分に飲んでくれるのであれば、そんなにピリピリする必要はなさそうです。

参考例

インターネットに、猫はどの給水器だと一番水を飲むのかを実験した結果をレポートしているサイトがありましたので、その内容をご紹介します。参考にしてみてください。同様のレポートをしているサイトは2つありました。1つは30匹、もう1つは15匹の保護猫で実験をしたようです。1つ目のサイトでは、(1)ステンレス製のお皿タイプ、(2)前述のヘルスウォーターシリーズ(お皿タイプ)、(3)電動式自動給水器(泉のように水が湧き出るタイプ)、(4)電動式自動給水器(蛇口のように上から水が落ちるタイプ)の4つで実験したそうです。その結果、猫が飽きずによく水を飲んでくれたのは、(3)(2)(4)(1)の順だったそうです。2つ目のサイトでは、猫が水を飲んだ量に加えて、手入れのしやすさやデザインについても採点をし、それらの総合評価で順位をつけていました。

評価の高かった順
(1)前述のヘルスウォーターシリーズ(お皿タイプ)
(2)陶器製で台座のついた高さのある給水器(お皿タイプ)
(3)小ぶりな陶器製食器(お皿タイプ)
(4)電動式自動給水タイプ(泉のように水が湧き出るタイプ)
(5)非電動式自動給水タイプ
(6)ケージに設置するタイプのノズルタイプ
(7)ステンレス製食器(お皿タイプ)
(8)100円ショップの小皿(お皿タイプ)

実は、猫の飲水量では(1)よりも(4)の方が多かったのですが、洗浄する際の手間が多く、その点で評価が下がったようです。これらの結果を見ると、いずれもヘルスウォーターシリーズが高評価でした。実は、筆者もヘルスウォーターシリーズを使用しており、慢性腎不全の愛猫も比較的よく水を飲んでくれています。また、洗浄の手間を厭わない方であれば、泉のように水が湧き出るタイプの電動式自動給水タイプは、猫がよく水を飲んでくれて、良いのではないでしょうか。

まとめ

猫が水を飲む

砂漠のような、水が少なく暑い地域で生まれた猫たちは、その過酷な環境でも生きていけるように進化し、それゆえに泌尿器系疾患のリスクが高いという宿命を背負ってしまいました。猫と一緒に暮らしている私たち人間が、少しでも猫が水を飲んでくれるような工夫をすることで、猫にしっかりとお水を飲んでもらい、いつまでも健康で幸せに暮らしてもらえるようにしたいですね!

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